JOY





雲一つ無い綺麗な月下の、丁度良い湯の中。
時折、湯煙を流すだけの温い風を感じながら俺はただ幸せで、こんな言葉を口にしていた。
「夢が叶ったってば」
俺の台詞に、隣で同じように月を見上げていたサスケが少しだけ振り向いて俺に尋ねる。
「どんな夢だ?」
「こうやってサスケと二人きりでさ、露天風呂に浸かって、月を眺めるのだってば」
「単純な夢だな」
「単純じゃないってば」
「少し前にも二人で温泉に行ったばかりだろうが」
俺からまた月へと視線を戻して答えたサスケに、俺は少しムッとする。
「サスケの誕生日ってのは、二年越しの夢だってば」
「俺の誕生日?」
「そうだってば。去年もサスケの誕生日に此所に来ようと思ったけど、ダメだったろ」
答えた俺の方へまた視線を戻したサスケの、真っ黒な瞳が丸く驚いていた。
「ナルト、まさかお前、去年の誕生日にも此処を予約してたのか?」
驚くと、ちょっとサスケは幼い感じがして、俺はそんなサスケも好きだから楽しくサスケの問いに答えた。
「おう。しっかりキャンセル料も取られたってば♪」
「バカだろ、お前」
が、直後のサスケの言葉は、キツイというか、相変わらずの口の悪さに俺は少し落ち込んだ。
「ただ、こんな風にふたりっきりで、祝いたかったんだってば・・・」
落ち込む俺の呟きに、サスケはふっと困ったように笑った。
「お前にバカって言ったのは、去年の俺の誕生日にはお前、木の葉にも居なかっただろ。それが何を予約してんだ?」
サスケに言われて去年の今日を思い出せば、サスケの誕生日俺は里外の任務だった。
それで私情から敵をバッタバタと薙ぎ倒しすぎて、仲間からも恐れられたのだ。
五代目火影には小言をくらったのも思い出す。
「思い出した。去年はあれで、綱手ばぁちゃんにエラく怒られたんだってば」
「怒られた?」
「サスケの生まれた日に側に居れねぇなんて、寂しくて、悔しくてさ。俺、敵に八つ当たりして、仲間もビビらせちまって、それを怒られたんだってば」
「ウスラトンカチ」
そう俺だけへの口癖を呟いたサスケは、とても綺麗に笑った。
好きな人が側で笑ってくれる。
ただそれだけで、湯当たり以外の熱を俺は感じていた。
そっと湯の中の手を伸ばして、サスケの手に自分の手を重ねてみる。
俺の動きに、ちょっとびっくりしたサスケの頬が赤くなった気がするのが、楽しい。
何度も、さっきもセックスしたのに、手を繋ぐ事にドキドキするのが、良いなと思う。
ぎゅっと手を握れば、サスケの手も俺の手を握り返してくれる。
幸せって、さっき思ったが、今はもっと幸せな気がする。
「去年のこの日、帰れない任務ってのは分かっていたろ。それでも此処を予約してたのか?」
「うん。なんかもう7月になったらサスケの誕生日が待ちどうしくてさ、だから今年も此処の特別室予約したんだってば」
「貯蓄家の癖に、なに散財してやがる」
「サスケの誕生日なんだから、散財じゃないってば」
「ナルト」
「うん?」
「ありがとう」
− ありがとう −
サスケの言葉が、体の中に沁みこんでいく。
だから握ったままの手を湯の中から出して、サスケのその手にキスをして、サスケの唇にキスするために俺は体を引き寄せた。
月を映す湯の静間に、波紋が緩やかに広がっていく。
俺の大好きなサスケの黒い瞳がゆっくりと閉じて、長い睫が間近に現れる。
キレイだってば。
それだけを感じて、俺はサスケの唇にキスをしようとした。
が。
「ちょっと待て!」
という、サスケの低い声と共に、俺の体は湯の中に倒されていた。
すげぇ良い気分で、例えるなら幸せの絶頂中、湯の中に倒された俺は、ザバッと浮かび上がった後で絶叫した。
「なんなんだってば!!」
「さっきやったばっかりで、なんで立ってんだ!!」
俺の絶叫に負けないくらいの声で、赤くなったサスケが叫ぶ。
立つ?
と言われて自分のモノを眺めてみれば、其処には湯の中で準備万端の俺のモノが立っていた。
「そりゃあ・・なるってば」
「さっきだぞ、さっき。俺に足腰立たないくらい突っ込んどいて、なんでもう立ってんだ!!」
「だってサスケと二人っきりで風呂に入って、ありがとうなんて言われたら、俺が立つのは当たり前だってば」
サスケの赤い顔に俺が真面目に答えると、ガクリと項垂れたサスケは頭が痛いみたいに額を押さえた。
「分った。俺はもう上がる」
「嘘っだろ!!」
上がろうと動いたサスケを慌てて捕まえて、俺は背中越しに抱きしめた。
形の良い耳を甘噛みすれば、ビクンとサスケの体は俺の腕の中で跳ねて、白い肌が湯当たり以外の熱を俺に伝える。
「・・っ、ウスラトンカチ!これ以上はやんねぇってるだろ!!」
「無理だってば・・」
甘噛みしたまま耳の中に息を吐き出すみたいに囁けば、サスケの瞳はぎゅっと閉じられて、赤く染まった肌はハズカシイという表情を俺に伝える。
それはカワイイというか、いつも俺の雄の本能をストレートで刺激する。
数えるのを忘れる程体を重ねているのに、サスケの表情はいつも俺にそう思わせるのだ。
抱きしめた腕でサスケを刺激させれば、その表情はカワイイから色のあるものへと変わってゆく。
でもそれは艶とかじゃなくて。
「サスケって、なんでそういつも、カワイイ顔するんだってば」
「・・ぁ・・。なに、言って・・・」
感じる声を噛み殺しながら答える様も、初めて体を重ねた時と変わらない。
「初めての頃と全然変わらねぇのってなんか、初々しいってば」
「年寄りみたいな事、言ってんじゃあねぇ!」
カッと頬を染めたサスケがカワイクて、愛しくて、たまらない。
「じゃあ、年寄りかどうか、サスケの体で確かめるってば」
「ウスラトンカチ!」
「怒っても良いけど、隙だらけだってば」
「あっ・・!」
噛み殺していたサスケの声が上がる。
本日3回目のそれは、お湯の中でとてもスムーズにいった。


ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж  ж


パタパタと団扇で風を送りながら、布団に寝かせたサスケの瞳が開くのを俺はずっと待っていた。
実はサスケはのぼせやすくて、風呂だって長い方ではない。
「やりすぎたってば・・・」
反省の言葉を呟いて、俺はサスケの寝顔を見つめていた。
キレイな、とても整った顔をしているが、決して女性のような顔ではない。
でもそれが、カワイクて、キレイで、この世の何よりも愛しいのだ。
改めて、俺ってこいつにすげぇ惚れてんだよな、と思う。
「・・・ん・・」
サスケの瞳がゆっくりと開いて、俺の顔を確認すると少し瞳を和ませたが、自分が寝かされている状態に気付くと、プイと俺から顔を背けた。
「ゴメンってば・・」
「・・・風」
「えっ?」
「止まってたら熱が引かねぇだろう」
「う、うん」
慌てて俺は、またパタパタと団扇でサスケに風を送り始めた。
白いうなじの後れ毛がゆらゆらと揺れて、今すぐそこにキスしたいが、それをしてしまうと獣だよな、と思う。
「ナルト」
「うん?」
「なんで俺の誕生日だからって、二人で温泉なんだ?」
こちらを向かないままでサスケが俺に尋ねた。
「う・・んと。サスケと離れてた頃の二年半、エロ仙人と修行の旅をしてたってのは前に話したろ。その旅さ、エロ仙人の趣味で温泉街が多かったんだ」
「修行の旅じゃなかったのか?」
「修行もしてたけど、どっちかってぇと、社会勉強だったかなって、今は思うってば」
「社会勉強?」
「木の葉の里以外の世界を知るってのだってば」
俺の台詞に、サスケの横を向いた顔が俺の方に戻ってきて、俺は嬉しくて微笑んだ。
「どんな世界だったんだ?」
「不平等な平等の世界。世の中って案外簡単に出来てるんだぜ」
「不平等な平等の世界で簡単?」
「うん。世の中には不平等が平等に転がってるんだってば。簡単な世界だろ」
「それが社会勉強か?」
「木の葉に居たら俺、そんなのも気が付かなかったってば」
サスケの形の良い唇が動いて、何か俺に言おうとしたが、それは言葉にはならなかった。
「でさ、その旅で温泉に浸かりながら月を見上げる度に、サスケも同じ月を見てるのかなって、いつも考えてたんだ。それからサスケを好きになって、サスケが生まれた大事な日は、ああやって二人で月を眺めたいなって、思ったんだってば」
「・・・なら、もう少しゆっくり眺めさせろ」
「それは、ゴメンだってば」
「ウスラトンカチ」
拗ねたように呟くサスケは、やっぱり愛しくて、俺は屈んでサスケの額にキスを落とした。
額当てをしていない白くて滑らかな肌は、愛しい以外の、もっと暖かな気持ちを俺の中に湧き上がらせる。
サスケの腕が動いて、俺の背に腕を回した。
「誕生日、おめでとうだってば」
「もう聞き飽きたぞ、それは」
ふありと咲く花のように笑うサスケの頬や瞼に、俺はキスを落としていく。
「何度言っても良いんだってば。誰かを愛するのがこんなに簡単だって、俺に教えてくれたサスケが生まれた日なんだから」
「簡単か・・・」
「簡単だってば」
「お前が言うと本当にそう聞こえるから、不思議だな」
「俺さ、火影になったらこの日を休みにするって、決めてるんだ」
「休み?」
「だってこの日は、絶対一緒に居たいってば」
「ウスラトンカチ・・・」
くすくすと笑うサスケの声や波動が俺の中に沁みこんで、俺の中に花を咲かせ始める。
「サスケ、キスして良いってば?」
「ウスラトンカチには、俺からしてやる」
そう答えたサスケの背にある腕が、ぎゅっと俺を強く抱きしめた。








「赤い糸ですね!」と嬉しいお言葉までいただいてリンクをさせていただいたのですが、
それがっ!!こ〜んなに素敵なお話までいただけるなんて!!(叫)
来子さんの書かれるナルサスは、本当に初々しくて可愛らしいんですよね。
そしてサイトにも掲載されています「ナルサス10年愛」の話は、2人が少しずつ育んでいく
互いに対する想いや愛情が丁寧に優しく綴られていて、どれも本当に大好きなお話です。
それを踏襲したラブラブなお話で、サスケがもう可愛くてにやけていたのですが、
まさかこのお話をぽぉ〜んとくださるなんて!!
んも〜、びっくりしましたですよ!!
太っ腹な来子さんに感謝感謝であります!!
愛人になっていただきましたので(笑)、これからも飽きられないように
愛情を注ぎまくりますよ!!
といいますか、これからもどうぞよろしくお願い致しますね!!
サプライズなプレゼント、本当にありがとうございました〜!