黄昏の告白 後編
道の先に見える白い建物。
風に乗って聞こえてくる子供達のはしゃいだ声。
「何やってんだろ…アイツ等」
楽しそうな彼等の声に、そらは疑問を投げ掛ける。
如何やら、鬼ごっこでもしているらしい。
駆けずり回っている子供達の姿が小さく見えた。
「あっ…ナルトさんが来てるっ!」
突然、そらの口から飛び出した耳に馴染んだ聞き慣れた名前。
俺は、驚いてギョッと目を見開く。
『何かの聞き間違いか?』
そう思った俺は、導かれるようにそらの見詰める先に目を凝らした。
視線を左へと移していくと、目に飛び込んできたのはヒヨコの様なトゲトゲの金髪。
キラキラと輝く金色の髪を持った青年は、逃げ回る子供達を追い掛けている。
「な・何でナルトがっ!?」
「えっ!?…ああ、そう言えばサスケ先輩とナルトさんはお知り合いなんですよね」
俺の言葉に、そらはのほほんとした調子で答える。
「月に一度の割合で、この施設にお金を寄付しに来てくれるんですよ…そして、時間がある限りああして施設の子供達と遊んでくれるんです」
今だかつて、そんな話は聞いた事がない。
俺は唯々驚くばかりで、言葉が出なかった。
「上忍になってから回数は減りましたが、任務が休みになると偶にこうして来てくれるんです」
小さな女の子を捕まえると、彼女をそのまま高く掲げ上げるナルト。
少女は大喜びして、両手を広げてはしゃいでいた。
子供を見詰めるナルトは、酷く優しい表情をしている。
何時も俺に見せている表情とは少し違う…酷く大人っぽい、包み込むような愛情溢れる優しい瞳。
俺は呆然と、そんなヤツの様子を見詰めていた。
如何してだろう?
何故だか、酷く胸が締め付けられる。
息苦しいほどの圧迫感に、俺は思わず胸元を握り締めた。
「…サスケ先輩?」
俺の様子を不思議そうに見上げるそら。
だが、そんな彼の視線に気付く事はなく、俺はひたすらにナルトの姿を見詰め続けていた。
少し遅い昼食は、実に賑やかだった。
施設にいる子供達は全部で16名…後は、この施設の管理をしているミサオさん。
そして、今回飛び入りのナルトと俺。
総勢19人の人間で囲まれた食卓は、賑やかを通り越して五月蝿いぐらいだった。
「私の料理は美味しいよ…遠慮しないで、たんとおあがりなさいな」
ミサオさんは突然お邪魔した俺を快く迎え、昼食の席に同席する事を歓迎してくれた。
笑顔を絶やさず、厳しく優しく子供達に接しているミサオさん。そんな彼女の元で育ったからこそ、例え両親がいなくてもそらは素直で大らかな性格に育ったのだろう。
「サスケ…そこのソース取ってくれ」
俺の目の前に置かれたソースを指差すナルト。
その口元に付いた食べかすに、俺は思わず眉をひそめた。
「オメェ〜は子供か?」
「んぁ…何の話」
「口の周りに色々付いてるぞ」
『えっ…マジ』とナルトは己の口元に手を伸ばす。
だが、ヤツはまるで見当違いの所を拭いていて一向に綺麗にならない。
「違う…そっちじゃないっ!!」
俺は思わず近くに置いてあった雑巾で、遠慮なくヤツの顔をゴシゴシと拭いてやる。
先ほど、子供達の汚れた足をその雑巾で拭いていたのは知っている。
無論、嫌がらせのつもりだ。
だが、その様子を見ていた6・7歳ぐらい男の子が…突然、俺達を指差すとやたらとデカイ声を上げる。
「すっげぇ〜、ナルト兄ちゃん…綺麗な兄ちゃんとラブラブしてるよ!!」
彼の言葉に、一気に子供達の視線が俺達に集中する。
そして、子供達全員から『ラブラブだぁ〜』との歓声が上がった。
「なっ///…ちが」
頬がカッと熱くなる。
慌てて言い訳する俺を見て、周りは余計に囃し立てた。
「ははは…サスケ、顔が紅いぜ」
ナルトはイヤらしい表情でにやにやと笑う。
そのニヤけた面に思い切り良く拳を埋めると、周りから拍手が沸きあがった。
スッカリ日が傾いた頃、俺達は席を立つ。
ナルトは『帰る前に行ってくらぁ』とトイレへ向かった。
取り敢えず、一人施設を出た俺をそらが慌てて追い掛けて来る。
「今日はいきなりすまなかった…ミサオさんの手料理、本当に美味かったよ」
「いえ、俺こそ楽しかったです」
そらはそれきり口篭る。
しかし、何か言いたげな表情をしていたので俺は黙って彼からの言葉を待っていた。
「先輩…俺ね、本当はアナタに伝えたかった事があったんです」
「?」
「でも、伝える前に玉砕です…俺、解っちゃった」
一体何の話だろう?
俺は首を傾げる。
「サスケ先輩は、ナルトさんの事が好きなんですね」
俺の顔を下から覗き込んで、そらは意地悪い微笑を頬に乗せる。
彼の言葉に、俺はギョッと大きく目を見開いた。
「愛しくて溜まらないって目でしたよ…アイツ等と遊んでいる時のナルトさんを見ていたサスケ先輩の目」
思わず、カッと頬に血が上る。
あの時、俺はそんな目をしていたと言うのだろうか?
「あんな目を見たら、俺じゃダメだって事イヤでも解りますよ…でも、『ナルトさんなら良いかな』って思ってもいるんです」
「い・一体…何の話なんだ」
意味を掴みかねる。
だが、そらは微笑むだけでそれ以上何も言わなかった。
「そんな所で、何やってんだってばよ?」
帰ってきたナルトが、俺達に声を掛ける。
そらと俺の間に漂う雰囲気に眉を潜めるナルトに対し口を開こうとした俺を遮って、そらは『何でもないよ』と明るく答えた。
「それにしてもさ…こんな所でサスケと会うなんて思ってもみなかったってばよ」
施設を出て二人きりになると、ナルトは開口一番そんな事を言う。
だが、それはコチラの台詞だ。
「俺の方が驚いてンだよ…オマエ、あの孤児院に寄付してるんだってな」
「え…ああ…まぁな」
「オマエがそんな事してたなんて…俺は初耳だ」
「そんなの…自慢して言う事でもないだろ?」
照れているのか?
ナルトは仄かに頬を染め、俺から顔を背ける。
「俺さ…子供の頃、ミサオさんに優しくしてもらった事があって」
そう言って、ナルトは照れ臭そうに頬を掻きながら微笑む。
「あの頃、俺は木ノ葉の大人達全員から無視されてたから…もの凄く嬉しかったんだ」
「…優しそうな人だったな」
「ああ」
九尾をその身に宿し、大人達から言われなき迫害を受けていたナルト。
そんな辛い過去の中で、ミサオさんの存在はヤツに取って唯一の救いだったのかもしれない。
「もし、俺が火影になったら…もっと施設を大きくしやりてぇと思ってんだ」
組んだ両手を頭の後ろに回し、ナルトは足早に歩いて良く。
夕日に照らされたヤツの背中を、俺はじっと見詰めていた。
徐々にナルトとの距離が離れて行く。
遠くなるヤツの背中に、ふと胸の中に湧き上がる大きな不安。
「ナルトッ!!」
思わず声を張り上げた俺に、驚いたような表情で振り向くナルト。
夕日に染まり不思議な色合いをしたヤツの蒼い瞳が、俺を真っ直ぐに見詰めている。
その時、俺は唐突に理解した。
俺を見ている時のナルトの優しい目が好きだ。
俺の名を呼ぶ時のナルトの良く通る声が好きだ。
俺の事を“好き”だと言うナルトの全てが好きだ。
そう…見ているだけで胸が締め付けられるほど、俺はナルトの事が好きなのだ。
「俺、オマエの事が…好き…みたいだ」
自然と口から零れ落ちるた俺の言葉に、大きく目を見開くナルト。
だが、ヤツよりもっと驚いたのは俺の方だ。
思わず己の口元を押さえるが、今更無駄な事である。
「それってさ…この間の告白の答えだと思って良いのか?」
熟れたトマトの如く頬を真っ赤に染めている俺を見て、ナルトは酷く嬉しそうに微笑んでいる。
そんなヤツの顔が直視できなくて、俺は顔を俯けたまま『勝手にすれば良い』と吐き捨てた。
「でもさ…出来れば『好きみたい』じゃなくて『好きだ』って言って欲しいな」
ナルトの言葉に、思わず顔上げる俺。
目の前にあるのは、まるで太陽を映したような明るい笑顔。
『好き』とか『愛してる』とか…言葉だけ口にしても、意味はないと思っていた。
しかし、そんな言葉も時には必要なのかもしれない。
でも、簡単には渡さない。
偶に口にするからこそ価値があるのだ。
「…そのうちな」
この答えが気に入らなかったのか?
ナルトはムッとした表情を隠しもせず、俺を睨み上げる。
「『そのうち』って、何時だってばよ」
「『そのうち』は『そのうち』だ」
「だから、何時だってばよっ!!」
「しつこいと一生言わねぇ〜ぞ」
ムキになって叫んでいたナルトだが、『しつこいと言わない』との俺の台詞にぐっと詰まる。
そして、黙り込んだまま不貞腐れたように頬を膨らますナルト。
ナルトの見せる、そう言う子供っぽい表情も…如何やら、俺はモノ凄く好きらしい。
「重症だな…こりゃ」
こんな事を考えている自分が、可笑しくて溜まらない。
そんな気持ちのまま突然笑い出した俺に、ナルトはキョトンと目を丸くする。
「気持ち悪ぃ〜な…何だってばよ、一体?」
「何でもねぇ〜よ」
そう答えながらも、如何にも笑いが収まらない。
そんな俺に、とうとうナルトは怒り出す。
「何でもないなら笑うなってばよっ!!」
如何やら、バカにされていると勘違いしているらしい。
トンでもない勘違いだ。俺は自分自身をバカにしているのであって、ナルトをバカにしている訳ではない。
だが、説明するのも面倒臭い。
怒れるナルトを上手くかわしながら、俺達は肩を並べて歩いて行く。
そんな俺達の背後では…連なる山々の間に、太陽が沈み行こうとしていた。
「サスカカ的秘密基地」及び「愛のサスケ受け部屋」の青文さんのサイトの
記念すべき100,000打を見事踏み抜きまして、有り難くもリクエストを受けて
いただきましたぁvvv
いやあもう、サスカカスキーだったころから通っていたサイトさまでまさか!と
自分でもびっくりするわ感激するわで・・・!(うるうる)
だって、こちらのサイトさまのお陰で私はナルサスに目覚めたんですから!
まさに青文さんは恩人なのです!
メインはサスカカサイトさんなのですが、こんな自分的には名誉なことを黙ってはいられません!
別館でサスケ受けもやっていらっしゃるので、図々しくもナルサスでリクをしてしまい・・・(汗)
「側から見れば、唯いちゃいちゃして いるだけに見えるような初々しい
ナルサス17歳ぐらい」とのリクエストに潔く応えていただき、お話を書いてくださったのです!
いやぁ〜もう、初々しいよぉ〜〜、コイツらめっちゃかわいいよぉ〜〜、と自分では絶対に
捻出できないラブいナルサスワールドで、もう大喜びでございました!
メインではなく別館の方のリクでも快く受けて下さった青文さんに感謝でいっぱいです!!
どうもありがとうございました〜vvv