存在という名の・・・
もう何本目かになったビールの缶を傾け、ぐいっとあおる。
ふう、と息をつき、ベッドに持たせかけた身体をそのまま頭も預け、天井を見上げる。
今日はいささか酔っぱらっているらしい。
任務で目を酷使したためなのか。
チャクラの消耗も普段より感じているのは事実だ。
酔いの回った身体がふわふわとしてそのままぼんやりとする。
上忍になって2年。
相変わらず人手が足りない状況で、休む暇もないほど任務に忙殺される毎日だ。
こうなると上忍での経験の長さは関係ないに等しい。最近では容赦なく高ランクの任務も振られるようになってきた。
この仕事に不満はない。
死と隣り合わせの仕事であっても、自らが選んで進んだ道だ。
たとえ安穏からは程遠い生活であっても、後悔はない。
その分、任務が困難を極めれば極めるほど、無事に里に帰ってくることができた感慨は大きい。
そして、誰よりも会いたかったあいつに会えるのが。
任務を終えて何をおいても真っ直ぐに、あいつに会うためだけに俺は里を目指す。
年を経るごとに強くなっていくその気持ちは、俺には大切で、必要で、何よりも愛おしい。
おかしなものかもしれないが、そう感じるたびに俺はあいつに捕まえられているんだと思う。
あの金色と空の青を宿す男に、心も身体も全部――
そんな自分が、俺は嫌いじゃない。
「サスケ、酔っぱらっちゃったのか?」
珍しく早いな、と声を掛けながらナルトが新しいビールをテーブルに並べる。
2週間の諜報任務を終えて、真っ直ぐとナルトの家にやってきた俺は、日だまりみたいな暖かい笑顔に迎えられた。
風呂をもらい、ナルトが作ったメシを食べ、酒をあおり、そうしてやっと張りつめていた緊張を解くことができた。
ナルトの存在が俺の全部を包み込む感覚に、すり減った神経が癒される。
依存しているのとは違う。
互いが互いを必要としている結果であって、それが俺とナルトのあるべき「位置」なんだと思う。
相手の存在そのものが、自分の全てを形作っている。
もしかしたら、自分だけがそう思っているのかもしれない。でも、それでも構わない。
こうしてナルトが傍にいるのだから。
顔を近づけてきたナルトに気づいて身体を起こすと、柔らかく唇を落としてきた。
数回啄んだ後、額をくっつけてきてちょっと心配そうな瞳で俺を覗き込む。
「写輪眼、使い過ぎたんだろ?」
諜報任務だということは知っているが、それ以上のことは詳しく尋ねては来ない。
守秘義務上話せないこともあるが、同じ上忍の任務をこなすナルトも、上忍の任務がどれだけ苛酷で、綺麗な任務ばかりじゃないことをわかっている。わかっているから何も聞かない。
「諜報だからな、仕方がねえよ。コレがあるから俺があたった任務だったんだから」
素っ気ない風で俺が言うと、ナルトがやんわりと俺の身体を抱きしめ、俺の首筋に顔を埋める。
僅かに身体にかかるナルトの重みが心地良くて、俺もナルトの背をそっと抱く。
しばらく互いの体温を感じていると、ナルトがうーん、と何やら唸り始めた。
どうした?とナルトの頭に頬を擦り寄せるように顔を向けると、ナルトがふっと顔を上げ、空色の瞳でじっと俺を見つめる。
「サスケのこと、休ませてやりてーけど・・・」
先を聞かなくても、ナルトが何を考えているのか、すぐにわかった。
最近では触れるだけで、ナルトのチャクラの流れがわかるようになった。それが熱を帯びナルト自身の中でどうなっているのかも、だ。
コイツには言っていないけど、わかるようになった分、こんな状態のナルトに触れられるだけで俺の身体は簡単に火がつく。
自分でも呆れるくらいに身体の芯がじわりとする、燻るような火種が灯るんだ。
相手を貪り尽くしたい、欲望の火種が。
俺をこんな状態にしておいて、今更何を言うのか、このウスラトンカチは。
てめえだけじゃねえんだよ。
「休ませてやりてえけど・・・、何だ?」
このウスラトンカチに嫌でもわからせるように、俺はうっすらと瞳に色をのせて見つめてやった。途端に、ピク、と反応をするナルトに心の中でほくそ笑む。
「・・・サスケ、反則だってばよ・・・」
わかってるくせに、と呟いたナルトにそのまま俺は身体を引き上げられ、ベッドに押し倒された。
烈しく重ねられた唇を応えるように貪れば、ナルトの手が俺の身体をせわしなく這い回り始める。
震える感覚が俺の肌を駆け抜けていく。ここまで来たら、俺ももうだめだった。ナルトの服に手を伸ばし、背中から手を入れて恋がれた肌に爪を立てる。
「サスケが誘ったんだかんな。後で文句言うなってばよ」
奪い合っては与えるキスの合間に、ナルトが言う。
てめえが柄にもなく我慢なんかしようとするからだろ?と俺は反論したい。
けど、快楽を追い始めた俺はもうそんなことはどうでもよくなった。
まあ、文句を言うか言わないかは、明日になってみないとわからない。
今はただ、自分の身体の中を溢れるほど、目の前のこの男で満たすことだけ――
それだけで充分だった。
初めて書いたナルサス話です。
書き慣れていない感じがてんこ盛りですね(汗)
チャクラの流れが興奮のバロメーターになるのか疑問なんですが、こんなのが2人の絆の証みたい
だったらいいかも、なんていう願望です。
ナルトもね黙っているだけで気づいているのかもしれないってのもオプションで。
妄想だけは人一倍あります(苦笑)