「あ・・っ、・・・ん・・・はっ・・・っ・・」

後ろからの烈しい揺さぶりに、堪えていた声が漏れてしまう。
両手と両足をつかされ受け入れるこの体勢はあまり好きではない。
服従を強いられるような体勢が性に合わないのが大元の理由だが、惚れている相手と向き合ってぶつかり合うようなセックスの方が自分らしい、と勝手に思っている。
まあセックスするのに自分らしいも何もないのだろうが、受け入れる側である自分が保とうとする矜持なのかと言われれば、そうなのかもしれない。
それに欲と愛情を全力で注ぎ込んでくる相手を、自分の手でやはり抱き締めたいのだ。
声を出さないのはこの体勢で受け入れさせられている反発だ。
だが背後の相手はそれを知っているくせに、声を出すまいと堪えている俺を殊更しつこく攻め立ててくる。
受け入れた箇所はすでに熱く熔けていて、無意識に逞しい猛りに絡みついているのはわかっていた。
身体の変化と自分の気持ちのギャップに、快感だけが身体の中に溜まっていって吐き出す出口を探し彷徨い続けている。
出てしまう声を何とか堪えようと、シーツに突っ張るように伸ばしていた手で布をくしゃりと掴む。
そうして耐えているのがおもしろくないのか、後ろの男がぐい、と昂りをねじ込んで背中に覆い被さってきた。育った雄を奥まで突き入れられ、身体に走る快感に耐えられなくて短い叫びを上げてしまう。
「なに・・?何か他のこと考えてんだろ?サスケ」
「・・なに、が・・っ、・・・あ・・」
手ががくがくと震えるのを何とか堪え、俺は潤んで霞みかけている目をつと背後に向ける。
そのまま大きな手で顎を掴まれ、休みなく俺の猛りを嬲っていた片方の手にぐっと力を入れられた。
うっ、と声が漏れてしまう。
「何、考えてんだってばよ」
「・・何って、も、いい加減に、早く、イけ、よ・・っ、は、・・・っ」

風呂場でちょっかいを出され、そのままベッドへと雪崩れ込んで、もう何度コイツの熱い欲望を叩きつけられたのか。
頭の中も欲にかき混ぜられ、もう意識ごと身体が崩れてしまいそうだった。

何を考えているかだと?

てめえで俺の中を、こうして身体も意識も全て支配しておきながら、よくもそんなことが言えるものだ。
だが、そんなことは口が裂けても言いたくない。言ってやるものか。
何とか持ちこたえている虚勢を目に表し、そのまま背後の男を見つめ続ける。
「・・・ったく、タチ悪りぃ。んな、エロい目して煽るんだかんな」
怒ったような、というより困ったような顔をして低く呟くと、そのまま苦しい体勢で唇を貪られた。

「俺だけしか考えられないようにしてやる」

口づけを乱暴に解いて背後の男はそう言った後、殊更愛でて止まない蒼の瞳に獰猛な光を宿し始める。
抱え込まれていた身体をさらに上から押さえつけられて、身体の重みをそのまま受け止め突っ張っていた腕ごと崩れ落ちる。
容赦なく首筋を愛撫され、嬲られる感覚にぶる、と背筋に震えが走る。髪を掻き上げられ貪るように吸い付かれた後、きり、と痛みが走り身体が跳ね上がる。
「・・・・あ・・・っ・・!・・・・」
汗と唾液に濡れたうなじにいきなり歯を立てられ噛まれていた。その衝撃に背後の男に嬲られていた俺のものがびくん、と頭を振る。
まるで獣が強さを誇るように、弱いものへと服従を誓わせるようなその行為は、屈辱を感じるはずなのにどうしてなのか動けない。その間も後からは身体を揺さぶられ続けていた。
噛まれる痛みとは裏腹に、緩くストロークを繰り返す突き入れが身体の感覚を掻き乱していく。
そうしてまた、ぎち、と歯が食い込んだかと思えば、柔らかく食まれては吸い付かれ、痛みと疼きの境界が曖昧になる。
ただ身体を震わせ、痛みが甘く痺れていく様に、次第に酔わされていくだけだった。


痛みと甘さ。
屈辱と快楽。


その両方が立て続けに身体に与えられ、堪えていた声がもう抑えきれなくなっていた。

「あっ、あっ、・・は、ん、っ・・・・あ、あ、・・・」
突き上げられ、じわじわと与え続けられる甘い痛みと快楽に、際限なく出続ける声は掠れてしまっていた。
「・・・・サスケ・・」
耳元に落とされた切ない声だけで、身体の熱が煽られる。男の勢いを増す動きに同調するように身体が蠢いて、暴走しかける己を持て余し、喘ぎが悲鳴にも似た叫びへと変わっていった。

ああ、と短い悲鳴と共に、身体を起こされ、男の座った状態の上に身体を落とされるように座らされた。
重い衝撃に枯れきった声でさらに叫びが口をついて出る。
掴まれた己の欲望は限界まで追い上げられ、びくびくと吐精を訴えている。空を切った手が苛み続ける男の腕を掴み、爪を立てる。
自分の快感を訴える合図に、再び首筋に歯を立てられ噛まれる。
もう、ただ甘いだけの叫びしか出てこなかった。
善いのか苦痛なのか、曖昧で限界すら見失いそうで、もう全てを投げ打って早く解放されたかった。
下からの突き上げは速度を上げ、質量を増した昂りが内部のしこりを抉っていく。自らも腰をくねらせ、自分の欲しい場所へと熱い塊を引き入れていく。もう自らの意志などではなく、無意識に身体が動いていく。


わかってない、と本当にこの男に言ってやりたくなる。
これ以上、お前のことをどう考えろと言うのか。
これだけ自分の五官全てを支配して、尚、言うのかと。


「あ、・・あ!・・あ・・あっ!・・・な、ると、・・・や、・・・も、・・あああっ、・・・・っ!!」
「は、・・・はっ、はっ、・・さ、っ、すけ・・っ・・・!!!」

身体をぶつけるような突き上げと同時に、2人ともが欲を解放していた。
電流が走ったみたいにびりびりと肌が震えた後、俺はがくりと後ろの男の腕の中に崩れ落ちていた。






翌朝、俺の首筋はひどい有様だった。
いくつもの噛み痕が鬱血した状態で散らばっていて、もう怒り心頭だ。
シャワーを浴びた後、鏡の前で呆然とする俺に「うわぁ、すげえ残ってんなー」と脳天気な声を掛けてきた男を蹴り上げたことは言うまでもない。
千鳥を食らわされなかっただけでも有り難いと思え!ウスラトンカチがぁ!

涙目になって蹴ってやった箇所を押さえている男を尻目に、服を身につけ朝食の支度をするために俺はキッチンへと向かった。
首を動かした瞬間、ちり、と痛みが走り、すっと首に手を当てる。


夕べの狂態を思い出す。


痛みと甘さ。
屈辱と快楽。


そのどれもが唯一求めている男から与えられたものだ。
心の中から沸き立つものの正体がいったい何なのか。
まったく本当に。
溺れているのはどちらなのだろう。
はっきりと言えるのは、自分が求めているのはただ一人だ。

そして、首筋に残るこの疼くような痛みが、己だけに向けるこの男の執着の証なのだ、と――
いずれは消えてしまう痕が惜しいような気がして、俺は気付かれないようにうっすらと笑った。









「アナログ」まるさん宅へ一万打のお祝いにお贈りしました〜。
ところどころおかしいところはもうご愛敬でスルーしてくださいねーー(滝汗)
しかし、毎度のことながらこーいうものを捧げものとしてお贈りしてもいいんだろうか??と思います・・・。
でもまるさんには殊の外喜んでもらえたのでよしとします。
ちょっと前にものすごく落ち込んでいた時に、まるさん宅のイラスト達にすごく救われたことがあって、
他にもいろいろと助けていただきました。
何かお礼がしたいと思っていたところにちょうど一万ヒットとのことでしたので、
不躾ではありましたが日頃の感謝と愛を込めてvvvお贈りしました。
そうでした、タイトル付けるのを放棄してすんませんでしたー!
なかなか深い意味のあるタイトルが素敵だわっvv 自分じゃ思いつかない(笑)
うふ、拙宅には飾らないつもりでしたが、素敵イラストを描いて下さったのでここぞとばかりにUP!!
ホントにいつもありがとう〜〜!!



   あいおい【相生】・・・ひとつの根元から二つの幹が分かれて伸びる意
               また二本の幹が途中で一緒になっている様
                相老(共に老いる)とも同意