Pillow Body & Talk
後ろから容赦のない突き上げを受けて、身体が揺らされていた。
一つ、さらに重い突きで欲望をねじ込まれると、思わず上げてしまった声を散らすために、掴んでいた枕の端をぎゅっと握り締めていた。
身体にはどんどんと快楽が溜まって来ていて、もうどうにかなってしまいそうだった。
意識まで飛びそうになり、喉を逸らして必死に耐える。
一度目は正面からたっぷりと時間を掛けて貫かれた。
今は身体を横に倒されたまま、片脚を持ち上げられて背後から男の欲望を受け止めている。
男の手で扱かれている自分のものは、早くこの攻めから解放されたくて仕方がないのに、受け入れた後ろはまだ足りないと男の雄に絡み付いていくのだ。
これ以上どうしたいのか、自分の身体なのにどうにもならなかった。
思考と身体がバラバラになっていく。
上り詰めたいのか、堕ちていきたいのか。
意識を手放すかわりに、思考を放棄するしかなかった。
快楽だけを追い始めると、甘い喘ぎが絶え間なく口から漏れる。
そんな様子を見たからなのか、受け入れていた男の欲望がぐっと質量を増したようだった。
そして脚を抱え直されると、吐精へ向けて男の動きがさらに烈しくなる。
ガクガクと揺らされる身体。
絡みつく粘膜。
呼応する乱れた呼吸。
そして、咆哮と嬌声。
二人同時に弾け、やがて迎える恍惚と安堵。
これが自分とナルトの、互いへの執着と存在の確かめ合い方だった。
しばらく脱力したまま互いに動かなかった。
忙しなかった息遣いが次第に長く穏やかになっていくのを、俺は目を閉じてただ感じていた。
重なった身体は汗でしとどに濡れていたが、決して不快ではなく、むしろ心地良くさえあった。
乱れていた呼吸が少し落ち着くと、ナルトが身体を起こし自分の分身を俺の中から引きずり出した。
思わず閉じていた目を開け、俺は息を詰める。
ぴったりと密着していたものが引き出される何とも言えない感覚と、たっぷりと注ぎ込まれた精がどろりと零れ出る感触に、俺の身体はぶるっと震えて小さな声を漏らしてしまう。
濃厚な愛情と精を受け止めた身体は満ち足りていたが、ひどく疲れていた。
一度身体を洗い流した方がいいのはわかっていた。
でもこのままもう眠りに就きたい。
そうして、うと‥としかけると、身体を離したナルトが俺の横に寝転び、背中越しに抱き締めてきた。
胸に触れた手を、そのまま肌の上に滑らせてくる。指や手のひらで肌の感触を確かめるように撫でられ、俺の身体がぴくりと反応する。
「…おい、もうやめろ‥」
喋るのも億劫だったが、もうこれ以上は付き合えないと釘を刺す。
「なに、サスケもう限界?体力ないなあ」
そう言ってナルトが俺の首筋に顔を埋め、口付けを落としてくる。
体力がない、と俺の性格をわかってて煽っているつもりだろうが、そうそう毎回同じ手は食わない。というよりは、真面目に疲れと眠気でもう早く休みたかったのだ。
「明日は早えんだよ、もう眠らせろ」
それに、明日は早朝から任務が入っているのだ。明日は休みらしいナルトに付き合ってはいられない。
すでに瞼も重くなってきて、俺はまた目を閉じる。
早く会話を終わらせて眠りたいのに、ナルトは俺の言葉を無視して身体を撫で回す手を止めない。
「…おい」
ちょっと言葉に怒りを含めて、俺は首だけを向けてナルトを見る。
ふと、ナルトの頭がくっついていたせいで、ナルトのふわふわとした髪が頬に触れる。
俺の髪とは違った柔らかい感触が気持ち良くて、つい不機嫌だった顔もすっと収まる。俺の動きに首筋にかぶりついていたナルトが顔を上げると、そのまま目と目が合った。
髪の気持ち良さにうっかりしてしまったが、ここできっちりと言ってやらねばナルトに流されるのがオチだ。俺はナルトの瞳を見つめてきっぱりと言った。
「もう離せ。今日はこれ以上ヤラねえからな」
俺の様子にごり押ししても無駄とナルトは思ったのか、それでも少しつまらなそうな顔をする。
「まだサスケが足りねえんだけどなあ」
そう言ってナルトが瞳に僅かに寂しさを滲ませて優しく笑う。
甘えているようにも見えるその顔に、俺はどうしても弱くてどきりとさせられる。
久々に抱き合って、会えなかった分を埋めたい。感じたい。
ナルトの想いはわかっているつもりだ。でも俺はうまく言葉で伝えることができない損な性分だ。
互いへの執着と存在を確かめたいのは、ナルトだけじゃない。
そして愛情の証を相手に刻み付けたいのは、俺だって同じなのだ。
ああ、本当に。
明日は早いとか、身体が辛いとか、そんな考えを投げ出してしまいたくなる。
事実、身体に燻っていた熱が欲へと変えられてしまっている。
こうやって俺の本心を暴いていくのだ、この男は。
いや、こんな顔をするコイツがいけない。
それともやっぱり俺は絆されやすいのか?ともう諦めるしかなかった。
「ならもうちょっとサスケに触らせて。それ以上はしねえから」
名残惜しむようにナルトはまた俺の首筋に顔を埋め、きゅっと身体を抱き締めてくる。
「…そう言って触ってるだけじゃすまねえだろうが、お前は」
俺は文句を言いつつも抱き締める腕から逃れ、くるりと身体を返して起き上がると、勢いよくナルトを上から押さえ付けていた。俺のいきなりの行動に、ナルトが目を丸くして驚いている。
「サ、サスケ??」
「仕方がねえから付き合ってやる。‥今度は俺が動く。てめえはじっとしてろ」
本心を誤魔化すために横柄な態度に出るが、きっとナルトにはばれてしまうだろう。
だから、せめて主導権くらいは握ってやらないとやってられない。
俺がやられっぱなしが性に合わないのは、ナルトもわかっているはずだ。
その証拠に俺の欲が灯った表情を見て、ナルトがにやりと笑う。
ナルトの瞳にも欲が灯ったのを合図に俺はナルトへと倒れ込んで、頭を両手で抱える。
指の間から零れる柔らかな金の髪が気持ちがいい。
欲が滲んでいても、蒼く煌く瞳はうっとりするほど綺麗だった。
愛でて止まない金と蒼。
俺はいつだって魅せられ、囚われている。
ナルトの瞳を見つめ両手で髪を掬う。そして、そのまま俺はナルトの唇に食らいつき貪っていった。
「大丈夫か?サスケ」
早朝任務に出る俺を見送るために、一緒に起きたナルトが玄関まで付いて来る。
「…大丈夫だ」
本当はきっぱりと言い切れるほど大丈夫じゃなかったが、半分は自分から煽った手前、弱音を吐くことはできなかった。
あれからは――
ナルトの上に自分から乗り、自分のペースで快楽を追って上り詰めていった。
ところが、あともう少しでイクところを、ナルトに阻止されたのだ。思う存分ナルトの上で乱れて身体を揺すっていた俺を、ナルトはがっちりと身体ごと動きを封じ込めてきたのだ。
欲望を吐き出す瞬間を止められた俺は、身体を震わせ声を上げて抗議をしたが、ナルトは離してはくれなかった。そうしてあろうことか、ナルトは俺を乗せたまま起き上がると、『サスケがエロくてたまんねえ』と下から俺を突き上げにかかってきたのだ。
後はもう、いつもと同じだ。
ナルトのペースにまんまと乗せられ、散々喘がされてイった瞬間に意識を手放していた。
結局いいようにされて口惜しくて仕方がない。
だが、いつまで経っても相変わらずなのが『俺達らしい』のだろう。
煽って追い詰めて、追い詰められ煽られて。
互いを捕らえて、捕らわれる。
誰も入る余地のない、これが俺とナルトの愛の形――
忍靴を履いて荷物を持って立ち上がると、覚えのある鈍痛に俺は顔を僅かにしかめる。
ナルトが俺の表情を見て、サスケ、と俺の名を呼ぶ。
振り返ると、ナルトがぎゅっと抱き締めてきた。玄関に立つ俺が少し低い位置にいるせいで、ナルトが大きな身体を屈み込ませて俺を抱き締めてくる。
ナルトの身体の温かみが、俺をホッとさせる。
「気ぃつけてな、サスケ。‥って身体が辛いの俺のせいだもんな。ゴメン」
ねだってしまったことを気にしているのだろうか、ナルトがしゅんとした声で気遣ってくる。ナルトにこんな気を遣われるなんて、俺も焼きが回ったのだろうか。
まあ予想外にがっつかれると、ちょっと堪えるのは事実だが。
「なに慣れない気を遣ってやがる。大丈夫だっつってんだろうが」
ナルトの胸のあたりに顔を埋めたまま答えると、ナルトが力を緩めて俺の肩を掴んでそっと身体を離す。
「今日はそんなに遅くなんねえんだろ?」
「ああ、多分な」
一日あれば十分にこなせる任務だ。何事もなければ夕方には終わるはずだろう。
「じゃ、俺晩メシ作って待ってるからさ」
ナルトの作る料理は、たいがい決まっている。カレーとか、本当に簡単に出来るものだ。精一杯のナルトの気持ちなのだろう。俺はふっとナルトに向けて微笑んだ。
「料理、俺もちょっとは上達したんだってばよ」
「まあ期待しないで、楽しみにしててやるよ」
俺の言葉に、うわ、可愛くねえの!と言うナルトの首に手をかけてぐい、と引き寄せる。そしてちゅっとキスを一つすると、ナルトも俺の腰を引き寄せ、俺の唇に触れてくる。
「じゃ、行って来る」
ナルトの身体から手を離して、荷物を肩にかけてナルトに背を向ける。
「うん、いってらっしゃいってばよ、サスケ!」
それはおかしいから、と何度言っても、『いってらっしゃい』の最後に『てばよ』をつけるクセは相変わらず直らない。
聞き慣れたその言葉に、俺の口元がふっと緩む。
一緒に扉の外まで出てきたナルトが、もう一度俺の背に向けて『おかしなナルト挨拶』を投げかけてくる。
俺の姿が見えなくなるまできっと佇んでいるだろうナルトに、俺は振り向かずに手を上げてそれに応えていた。
久々に自分の書いたものを見直してみると、もうホントにガクリとしますね…(涙)
気になるところは直したつもりですが…。
ああ、話がいつも通りの見たことがあるよーな話だぞ?ってのは、お目こぼしくださいね〜