−烈 RETSU−





 互いに任務に明け暮れ、すれ違ってばかりの日々が続き、こうして抱き合ったのは何日ぶりだろうか。
 久々に近くに感じる温もりと匂いに、俺の心がじわじわと確実に満たされていくのがわかる。
 苛酷な任務を終え、里に帰り着いた安堵とは別の、心と身体の安寧がここに、ある。
 それは俺にとっては他の誰でもない、このナルトのもとにしかない。



 「・・・サスケ、やっぱ疲れてるよな・・・」
 濃厚な身体が熔けるようなキスをようやくといた後、ナルトが俺の首筋に鼻を擦りつけて呟く。どういう意味で聞いてきたのか。
 熱のこもった吐息を耳の裏側に感じてそれはすぐにわかった。と同時に触れ合った身体から俺のチャクラの消耗度も伝わってしまったらしい。
 だからといって、ナルトに付き合ってやれないほど疲れ切っているわけではない。
 これくらいでナルトに気を遣われるなんて、俺も随分とナメられたもんだ。

 それに――

 離れていた分。

 相手が欲しい、と思っていたのは何もナルトだけじゃない。
 俺も。いや、俺の方が――
 自覚した途端、俺の中で浅ましい欲望が頭を擡げる。

 「・・・してえんなら、好きにしろ」
 欲する感情に気づかれないように俺は声を抑えて呟いた。
 それにしても。
 いつもはこっちの都合などお構いなしに襲いかかってくるくせに。
 慣れない気ぃ遣うな、とナルトの頭を小突いてやる。
 逃げもせず、ふざけることもなく、それを黙って受け止めたナルトは、「・・・うん」と呟いて首筋に頬を擦り寄せてきた。 そしてぎこちなく身体を起こしたナルトが俺の顔を覗き込む。

 (・・・・・・・っ!)




 吸い込まれそうな瞳の色に、一瞬息が止まる。
 それはあの己が恋がれて止まない愛しい色ではなく――
 見慣れた空色の瞳は金の粉を次第に纏い付かせて光り始め、俺の瞳を捉えていた。
 身体の自由がきかない。
 部屋は窓から差し込む月明かりで満たされていた。
 蒼白い静寂ともいえる空間の中、動くこともままならないまま、目の前の双眸が次第に獰猛な色を濃くしていくのを見つめるしかなかった。
 俺は小さく喉を鳴らして、ぞくりと身体を震わせた。
 俺の動揺を察したナルトが、さらに顔を近づけて両手で俺の髪を梳く。恐ろしいほどの嗜虐の色を浮かべているとは思えないほど、髪を梳き撫でる手は優しい。
 「俺、やばいんだ。セーブできそうにねえ。このままやったらサスケを滅茶苦茶にして、止められそうにない」
 苦しそうに言葉を吐くナルトから目が離せない。ナルトの瞳を覗き込むうちに、その禍々しい正体の片鱗が見えた。
 九尾が――
 ナルトの中の九尾がナルトの身の内に潜む欲望に食らいつき支配しようとしているのか。
 会えない焦燥が生んだ、狂おしいほどの欲望に身を滾らせるナルトの精神の隙間を縫って九尾が己の存在を誇示しようとしているのか。
 普段のナルトであれば己の強靱な精神力で押さえ込めているはずだ。
 任務で何かがあったか・・・。
 何も言わないナルトから無理矢理聞き出したくはない。

 俺の身体を食らい尽くすことで満足できるのなら。
 それでナルトが解放されるのなら。

 いくらでもくれてやる。

 窓から差し込む月明かりで、ナルトの金の髪が蒼白く輝いている。獰猛な野獣そのままの恋人の姿が、綺麗だとすら思った。
 たとえその身に何を潜ませようと。
 血を、肉を、食らい尽くされても俺の中には恐れなど――何も存在しない。
 ただ、あるのは相手を欲しいと願う卑しいまでの欲情だけだ。

 「・・・来いよ、ナルト」
 「・・・サスケ」
 わずかに保っている理性に必死に食らいついているナルトが唇を噛みしめる。
 躊躇うナルトを煽るよう、俺は欲と色にまみれた強い視線で捉える。
 「滅茶苦茶にしたいなら、しろ。どうなったって・・・お前の全部受け止めてやる」
 だから、と見つめていた瞳をわずかに伏せ、ナルトを誘う仕草をしてわざと仕掛ける。
 まるで空気が何者かによって揺さぶられ、息も出来ないような重圧が圧し掛かってきた。
 気づけばナルトに四肢を押さえつけられ、烈しく絡む口づけを受け止めていた。
 せわしない息づかいと共に、ナルトの唇が舌が指が、俺の身体に余すことなく欲望の刻印を残していく。
 俺の手はナルトを追って、ただその逞しい体躯に絡ませるだけだった。

 灼けつく苦痛と突き上げる快感に、喉を枯らし嬌声を上げる中。
 意識の遠くで醜悪な咆哮を聞いた気がした。

 九尾――

 奪えるものなら奪ってみるがいい。


 霞む意識の中、そう呟いた俺は口の端に微笑みを浮かべていた。










私が日記に書いた話をあかねさんへ差し上げたところ、恐れ多くもイラストを描きます!と
仰っていただいて、こ〜〜んな素敵なイラストを描いて下さったのです!!
あああああも〜〜〜〜、なんっって素敵なのぉおぉ〜〜〜!!
互いの瞳から目が離せなくて見つめ合う2人の表情!!
この「目の表情」をご覧下さい!引き合う2人の絆の深さがめいいっぱい描かれてますよ!!
肌の色がナルトとサスケと微妙に違って、この肌の色の違いがっっ!!(ジタバタ)
2人が並ぶことによってものすごく艶めかしくてぞくぞくします〜〜っ!!
私のヘタレな話に、ものすごく喜んでくださったこともとっても嬉しかったのですが、
こんなにも素敵なイラストを描いて下さったあかねさんに、本当に感謝してもしきれませんっ!
本当に本当にありがとうございました〜〜!!