お子様なあの子

 

「むぅ〜ぶぅ〜」

 ごぽごぽごぽごぽ……

 千尋は湯船の中でぶくぶくと沈みながらため息らしきものをついた。

「おい、どうした千?さっさと出ないとふやけちまうぞ」

 頭を洗い終えたリンが呼びかけると、千尋は恨めしそうな顔つきでそちらを見つめた。

「おいおい……(おれが何かしたかぁ?)」

 リンはジト目の千尋に首を傾げた。

 その後同じ湯船に漬かって、ちゃぽんと響いた音の中、静かに目を閉じた。頭の上のタオルが蒸しタオルになっていて気持ちよい。

「で?どうした?」

「……むう……」

「そこ、唸ってない!……ったく、どうしたってんだ?」

 隣りでうだっているのか何なのか謎の唸り声をあげる千尋に突っ込みをいれつつ、桶の水に浸し、冷たくして濡れタオルを頭においてやる。

ゆだらないようにとの配慮だ。

(どうせこいつ、話し終えるまで出るつもりないだろうしなぁ)

「さて、と?」

「あのね……」

 千尋は急に本題に入った。

「リンさん、胸大きくっていいなあ……って思って……」

「あのな!」

 慌ててリンががなるが、少女の方もかなり本気のようで、ぽつりと、

「だって……男の人って大きい方が好きだって今日ね青蛙さんが……」

(全く青蛙のやろう、ろくなことを吹きこまねぇ……)

 だが、信じて本気で悩むこいつもこいつだよな、とリンがため息を付いたのは言うまでもない。

 

 風呂を上がって,着替えながらもまだ気にしている様子の少女に、リンは早急に妙案を、と久々に頭をつかった。

「そうだ!」

 流石にだるそうな千尋に「ほらよ」と飲み物を渡してやりながら、耳打ちする。

「なあ、じゃあさ。ハクの奴に直接聞いちまえばいいんじゃねえ?」

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

「えっ?」

ハクは唐突な質問にうろたえた。

当然のことである。

大好きな少女にいきなし「胸の大きい女の人が好きなの?」だなんてきかれたら誰だってうろたえよう。

しかも少女は自分の質問の危うさに気付ちゃいないのである。

「ねえ、どうなの?」

「いや……どうなのって言われても……」

 どう答えろと?

 こういうことを吹き込みそうな千尋の同僚(にして自分の部下)を思い起こして、悪態をつきながら対策を練るが一向に答えが出てこない。

「千尋、あの……」

「やっぱり……。ハクも好きなんだ……」

涙を浮かべながら問う千尋にどうしていいものか悩んでいたハクはだいたいの事情を悟った。

「あの、ね。千尋?」

「ふぇ?」

 優しく頭を撫ぜてやる。

「千尋はそのままでも可愛いと思うよ。少なくとも私は今の千尋が好きなんだから」

 「……うっ………///」

これぞ秘儀『女殺し』である。

泣きかけていた千尋もすっかりその横顔に見とれてしまい、「うん……」と頷く。いうなればすぐさま《落ちていた》のである。

 

 ☆ ☆ ☆ ☆

「へえ、なるほどなあ」

 その日の風呂場帰り。リンはすっかりご機嫌の千尋からその理由を聞いて納得した。

(ハクの奴も結構やるじゃん)

 ある意味このお子様を宥めるのは辛いだろうに、と同情票が集まるくらいなのである。リンも見事な手なづけ方に驚嘆の意を示していた。 

 でも、やはり妹分は可愛く、それを付けねらう男はリンの敵で、千尋と別れてから偶々出合った(いや正確には意識的にリンがそうなるよう仕向けたのだが)ハクに向かって、

「おい、お前さ。……まさかとは思ってたけどやっぱあれなんだ」

 と、思わせぶりに言った。

「何を言ってる?アレとなんだ?」

「ん?アレだよ、ロリコンって奴だろ?胸小さい方がよくって、このまま千尋が育たない方がいいだなんてさ」

「……育った方がいいに決まってる」

 いつもはここでハクが怒ってお終いなのだが、今日は彼も気が緩んでいたらしく、ぽろりとこぼした。

「でも、まだ先でいい」

「ああ!!お前!もしかして紫の上計画立ててるだろう!」

 焦ったリンが言うもどこ吹く風、測ったようにとおりかかった千尋を「おいで」と呼び寄せて、抱きとるように自分の方に引き寄せると、

「なあに?」

 可愛く笑う少女のほっぺたに軽く口付けて、

「千尋だから好きなんだよ」

 と堂々といちゃついてみせた。

 「ハク……////」

 ほぼパニックになっている千尋に対してハクはしめたとばかりにリンを見てくすくす笑った。

「けっ、やってらんねえ」

 リンは方向転換し、マトモにハクが勝ったようにその場は思えた。

(でもな、いっとくけどこれじゃ負けないぜ)

 千尋が泣かなければリンにとってハクは敵ではないのだ。

「なあ,千尋、明日も一緒に風呂入ろうな。最近結構千尋も成長したからそのうちハクが相手じゃなくても、誰もが振り向くようなグラマーな女になると思うぜ」

「本当!」

「ああ、勿論。リン様の保障付きだ」

 これ見よがしにハクに向かって言ってやる。

 前を歩いていたハクは思わずよろめき、リンに笑われた。

 

 (りんの奴め……)

 

 このバトルが加速したことは言わずもがなである。

 

 

 

 

MAYMOON様.のところのキリ番でいただいてしまいました!!
千尋が素敵です☆私だったら「胸の大きい女の人が好きなの?」なんて言われたら
迷わず「好き☆」と答えちゃいますけどね(死)
「乳(でもえっちなし)」という訳わかんないリクを受けてくださり、本当にありがとうございます。ホントはまた何か隠そうかなって思ったんですが、風邪で死亡。
この分は違うブツで贈らせていただきますね。ふふふ。