はんぶんこ

 

 

 

 

それは2月14日、公園でチョコを渡された時の事だった。

千尋が真っ赤な顔で小さな包みを差し出してきた。

当然私にもその包みの意味はわかっていたのだが、あまりにも千尋の顔が赤く染まっていて可愛らしかったから、つい知らないふりをしてしまった。

「その包みは?」

意味がわからないふりをして問い掛けると、千尋は真っ赤な顔のままで俯いてしまった。

まったく、こういうところが可愛いのだ。

素直に言えば良いものをどうしても恥ずかしがって言えないとは。

「黙っていてはわからない。どうしたの?それ」

ますます赤くなる千尋の顔。

間違いなく、今千尋の頭には私の事しかないだろう。

満足感に頬が緩む。

「あ、その、これは…」

「顔が赤いよ」

言いかけた千尋の言葉をすんなり制すると、私は千尋の手から包みを受け取った。

白い包装に翠のリボン。竜の私と同じ色。

きっとこの包みを作っている間も、千尋は私の事だけをまっすぐに想っていたのだろう。

そう思うとますます頬が緩んでしまう。

「これ、開けても良い?」

いちいち千尋の耳元で囁くように言うと、千尋は小さくコクンと頷いた。

丁寧に包まれている包装を絶対に破ったり汚したりしないように開いていくと、そこには長細いチョコレートが5本入っていた。

おそらく手作りで贈られるだろうと思っていたのに。

人に聞くところによると手作りは丸やハートの形が多いらしいのだが…

少しがっかりしながら千尋を見ると、赤い顔のままうつむき加減で私を見上げる2つの瞳。

まぁ手作りでなくとも、千尋が私の為に用意してくれたのだからそれで良いか。

「食べてみても良いかな?」

いちいち聞いてみたのは後で千尋を困らせてみる為。

面白い方法を思いついたのだ。

「うん。その…美味しいと良いんだけど」

その言い方はひょっとして…。形は一般的ではないが、手作りなのだろうか?

千尋の反応に気を良くした私は、1本のチョコレートを口に入れてみた。

ほろ苦いチョコレートの香りと、柑橘系の甘味?

疑問が顔に出たのか、千尋が小さく答えてくれた。

「あのね、ハク甘いもの苦手でしょ。だからチョコレートをできるだけ苦くして、オレンジピールに掛けてみたんだけど」

千尋はそこまで考えて私の為に手作りチョコレートを用意してくれたのか。

幸せで胸がいっぱいになる。

今すぐ千尋を抱きしめてどうにかしてしまいたいほどだ。

だがさすがに場所も時間もわきまえず押し倒すわけにもいくまい。

仕方がない。やっぱりあれで我慢しておこうか。

私は残った4本の内3本を味わうと、残った最後の1本を前にすまなそうに千尋に問い掛けた。

「すまない。あまり美味しいからつい1人で食べ過ぎてしまった。千尋も食べたかったよね?」

すると千尋は急に顔を上げて、ブンブンと首を横に振った。

「そんな事無いよ。それは、その、今日ハクに渡したくて作ったものだし、だから全部ハクが食べてくれた方が嬉しいの」

まっすぐな視線が合うと、途端にまた恥ずかしそうに顔を伏せる。

普段ならこのまま顔を上げさせて口付けてしまいたいのだが、今日は特別だ。

「でも私は美味しいものは一人で食べるより、千尋にも食べてもらいたい」

「え、でも…」

優しい優しい私の千尋。

そんなそなただから愛しいのだよ。

「だったら半分ずつにしよう」

私は千尋の口に残った最後の1本を半分くらい押しこむと、驚いている千尋に笑いかけた。

「上向いて。半分こだからね」

真っ赤になってうろたえる千尋の手を両手で捕らえてしまうと、これでもう千尋は自分でチョコレートを取る事もできない。

さぁ千尋、諦めてそなたから私に口付けておくれ。

「だ、だって…」

「だって、私のチョコレートなのだろう?」

千尋はしばらくおたおたと焦っていたのだけど、でもようやく落ち着くと、真っ赤な顔で目を瞑って上を向いた。

私としては何とか千尋から口付けてくれないかと思ったのだが、やはり千尋からというのは無理があったらしい。

私は諦めてそんな千尋の表情だけでも楽しんだ。

これはこれで良いね。

まるで千尋から口付けを強請られているようだ。

「これで半分こだね」

私は千尋の唇をわざと挟むようにゆっくりと時間を掛けてチョコレートを齧ると、唇が離れた途端、千尋はそのまま私の胸に顔を隠してしまった。

よっぽど恥ずかしかったのだろうか。

何と可愛らしいのだろう。

でもそんなに可愛らしいと、もっと恥ずかしがらせてみたくなってしまうね。

「バレンタインありがとう」

そっと髪を撫でると、千尋は赤い顔で私の胸にすがりついたまま、恐る恐る視線を上げてくれた。

「知ってたの?」

「もちろん」

私の答えに可愛らしく膨れてしまった千尋の背に手を回すと、そっととどめを囁いた。

「でもこういうのも良いものだね。まるで千尋に口付けを強請られているみたいで嬉しかったよ」

言われた千尋は再び真っ赤になると、先ほどとは比較にならないくらいぎゅっとしがみついてきて。

どうしようもない程に恥ずかしがってしまった千尋を胸に抱きしめて、私は1人幸せに浸っていた。

 

 

 

 

バレンタインhjイラストをUPしたら、こんなにやりなモノを
くらげサマからもらってしまいましたー!!!!
これぞ海老で鯛を釣る!!!ラッキーです。千尋が可愛い…
しかも野外プレイ!(違う)どきどき。

もう一箇所に贈られてるとの事で、何処だかわからないので許可の取りようもなかったのですが、UPしちゃいました。ごめんなさい。
だって。好きにしていいって言われたんですもの☆