二人の関係

 

 

 

 

「千尋ちゃん、準備できた?」

 5限の講義が終わるな否や、千尋のいた机に友達が寄ってきた。

「うん、出られるよ」

「ダメだよ。そう言うときは『いくばっか』って言わなきゃ」

「いくばっか…?」

「それ、どこの方言よ」

 千尋の問いと共に、やっぱり「いくばっか」は突っ込まれていた。

「ええー?フツーだけどなぁ…」

 言った彼女はすっごい不思議そうに悔しがる。

 

 この二人は千尋が今年、大学に入って初めてできた友達だった。

 偶然取ってるゼミなどが同じものが多かったためもあって、もう後期も終わろうとしている今でも、入学当時と同じようにつるんでいた。

 

「ねぇ。今日はどこに行くの?」

 そう、実は今日の行き先は千尋だけ教えられていなかった。

 なぜなら…

「じゃーん。今日はなんとU大との合コンなのだ」

「やっぱり時代は理系の男よねー」

「収入ありそうだし」

 なーんて勝手に盛り上がってる二人をよそに、千尋は思わず頭を抱える。

 

「わたし、合コンは行かないっていつも言ってるでしょ!!」

「そう思って、今日は黙ってたんじゃない!」

 いや…黙っていられてもそれはどうかと思うんだけど…

「まさか、本当に断るなんて言わないよね?ちーちゃん」

「だって、今日はオンナのコ4人そろえたら、奢ってくれるって言うんだよ!?

 もし一人でも欠けたら、ワリカンになっちゃうんだから!」

「そんなこと言われても…」

「その分、千尋ちゃんが払ってくれるって言うんなら、来なくてもいいけど…」

 なんだかメチャクチャな話だが、二人の迫力に負けて、千尋はうまく反論できないまま丸め込まれてしまって。

「……食事しかつき合わないからね」

「うん、OKOK☆だから好きよ。ちーちゃん」

「…………」

 

 そんなこんなで、押し切られるまま連れてこられた、ちょっとこじゃれたイタメシ屋。

 4:4で向かい合うように座って、食事をしているけれど、早く帰りたい一心でもう味なんてよくわからない。

 

 ……どうしよう…確かに食事だけって言ったけど…食事がこんなに長引くとは思ってなかったんだもん。

 ――――――…ハク、待ってるよね…

 

 自分に話し掛けられた内容も適当に流して、ちらりと時計を見る。

 うん、もう帰ろう。

 

 ぱっと見でも既にできあがりかけている一組は置いておいて。

 隣のオンナのコに声をかけようとした瞬間。

 

 ざわっ

 

 店内が一瞬ざわめいた。

「やだ、カッコイイよ、ロケか何か?」

「ほら、ちーちゃんも見てみなよ」

 そう言われて目を向けた方向には

 

 ――――――ハク!?

 

 ハクも千尋を見つけ、足早に近づいてくる。

「ハ、ハク、なんでっ…」

「遅いから心配になってね、(気を)探したんだけど…」

 

 どうやら知り合いらしい二人の様子を見て、彼女たちも黙ってはいない。

「ちょっと、誰よ彼」

「千尋ちゃんってば!」

「ご、ごめん!ちょっと待ってて!!」

 千尋は慌てて席を立つと、ハクの腕を引っ張って入り口の外に連れて行った。

 

 

「今、帰るって言ってくるから、ちょっと待っててね」

 そう言ってハクを入り口に立たせたまま、千尋はみんなが残ってるテーブルへと向かう。

 ――質問攻めに合うのは目に見えている。

 だったら……

 とにかく逃げるしかない。

 

 千尋は勢いよく椅子にかけてあった上着とバッグを持って、深く突っ込まれる前に逃げようと誓う。

「ごめんね、急用なんだって。今日は帰るね。

 あ、料理ごちそう様でした。」

 

 …………

 周りから何か言われるだろうな…と思っていた千尋は、逆に何も言われないことに不安感を覚える。

「え……な、何?」

「……明日覚えておきなよ?」

 ――――――(汗)

 とりあえず軽く手を振って店を出ると、入り口にたたせたままだったハクは、あからさまに機嫌が悪そうだった。

 

「……お、お待たせ」

「もういいの?じゃ、帰ろうか」

 ぱっと見、フツーに見えるけれど、やっぱり機嫌が悪い。

「……怒ってる?」

「怒ってなんかいない」

 ――――――うそつき。

 いつもだったら手を繋いでくるくせに。今日のハクは千尋の2歩前を歩いている。

 

「……知らなかったんだってば…」

「…何が?」

 ハクはまだこちらを向いてくれない。

 

 行った時点で、ある程度こうなるコトは予想していたけれど、こうも露骨だとすごく悲しくなってくる。

「合コンだって、知ってたら断ってたもん…」

「でももっと早く帰れたりしなかった?」

「……おごりだって言われちゃったから…ホントは2次会になったら抜けようと思ってたの!!

 なのにみんな全然出ようとしなくて…」

 やっぱり、背中しか見えないのが寂しくて。

 千尋は足を止めてしまう。

「だって、4人揃わないと割り勘になっちゃうって言われて…」

「千尋」

 ハクはそっと千尋の手を取った。

 

「ハク?」

「違うってわかっててもね。他の男とこんな長い時間一緒にいたと思うと、やっぱり穏やかになれなくてね…」

 そう言って、千尋の指に自分の指を絡ませる。

「帰ろうか」

「うん」

 

 

「ねぇ、さっきの彼。ちーちゃんの何だと思う?」

 まだイタメシ屋で合コンを続けている二人は、どちらからともなく口にした。

「…そういえば…千尋ちゃんって、ときどき左手の指に指輪してんの知ってる?」

「うん。薬指でしょ?わざとか素か、牽制のためだと思ってたけど…」

「今まで彼氏がいるとかって話もなかったよね…」

「合コンも来なかったよね…」

 

「明日は尋問かな」

 

 

「あーあ…」

「どうしたんだい?」

「明日が恐いなって…」

 明日は逃げられないだろうなぁ…と千尋はもう一度大きなため息をつく。

「何が恐いの?」

「………ハクのコト、絶対聞かれるから…」

 そう、まだ誰にも言ってないのだ。

 彼氏はいないけど、実は夫がいます☆なんてことは。

「…千尋の旦那だとは紹介してくれないのかい?」

 繋いだ手にいたずらにキスされて、千尋は耳まで真っ赤にする。

「だってっ…学生結婚してますなんて言ったら、なんて言われるか…」

「では、私は千尋の何と紹介されるんだい?」

 

「……か、彼……」

 

 真っ赤になって俯きながらそう言われて。

 それも悪くないな…とハクは思う。

「でも、二人の時は夫婦だよね?」

「うん……」

 

 確かに明日何を言われるかわからないのはこわいけれど。

 それもまぁ、幸せのおまけなのかなぁって。

 

 

 

 とりあえず、今は考えないようにしておこう。

 

 

 

 

 

めちゃくちゃ遅くなりました〜〜〜涙
30000HITのゲームでリク頂いた「大学生な千尋」です。
自分大学行ってないから、専門学校をベースにしてるので、
なんかヘンなことも多々あると思いますが、目瞑ってください。
(ちなみに短大のつもりなんで。
オンナのコで4大出たら22以上ってのも…辛いよなーという、
間違った価値観からなんですが……)
で。
実はこれ、12月に書いたものなんです(死)
打ち込んでなくって。なので今回、久々に読み返して、びっくり☆なのが
コートとかブーツとかでてきてる!!って……
ダメですね。書いたらすぐにUPしないと……