kiss mark

 

 

  ちうちう ちうちう ちうちう

 

「千尋…私の腕はおいしくないぞ…?」

「う、うん…」

 

 ハクは、さっきから自分の腕の内側に吸い付いている千尋を、怪訝に見つめる。

「あっれー…おかしいなぁ…なんともないや」

 唇を離し、千尋は自分が吸い付いてた場所をじっと見る。

 

 友達に聞いた話では、これでいいはずなのに。

 

 それでもハクの腕は白いままだった。ハクは白いからすぐつくと思ったのに…

「さっきから何をしているんだい…?」

「キ、キスマークをね、つけようと思って…」

「きすまーく?」

 『キス』という言葉は知っていても、後ろに『マーク』が付くと、ハクには判らない言葉に換わる。キスに印があるのだろうか?確かに紅を着けていれば、唇の形はつくだろうが。

「えっとね、キスマークは『この人は私のものです』って印なんだって、友達が言ってたから…その…」

 

 学校の友達が、体育の時間に見せびらかしてた、それ。

 

「私もカレにつけたのよ。私のカレだって印にね」

 そのあとはもう。

 「どうやってつけるの?」とか「痛くない?」とか。

 女の子だけの話が盛り上がって。

 

 嬉しそうだった友達を見て、千尋は自分も…とチャレンジしていたのだった。

 けれど現実は、そうはうまくいかない。

 

「―――…つまり、私は千尋のものだって、千尋が思ってくれているんだね?」

「―――――うっ」

 身もフタもなく言われると、なんだかトンデモナイことをしていたような気になってくる。

 でも、ハクはそんなコトはおかまいなしに、すごく嬉しそうで。

「嬉しいよ。私は千尋のものだ。

 千尋も…私のものだと思っていいんだね?」

 千尋がコクンと頷くと、ハクはそんな千尋のおでこに軽くキスを落とした。

 

「―――私にも、その印をどうやってつけるのか、教えてくれるかい?

 私も千尋にきすまーくとやらをつけてみたい。

 …千尋が私のものだという印に……」

 

 これでもかってくらい、甘い声で言われてしまったら、千尋はもう断れない。

「えっとね…わたしが聞いたのは…

 唇で強く吸うと赤い痕がつくってコトだったんだけど…」

 

 うまくいかなかったのよね…あんなにがんばったのに。

 

 千尋の言ったことを、ハクはハクなりに考えてみる。

 つまり。

 強く吸えばその場所の血が一時的に内出血を起こし、赤くなる…

 そういうことだろうか?

「で…その友は何処に印をつけていた?」

「ここだったかな?」

 千尋は自分の首筋を指差す。

 確かに腕よりは皮膚も薄く、痕にはなりやすいだろう。

 

「では、次は私が…」

 そう言ってハクは千尋を抱きこみ、さっきまで彼女が指差していた首筋に、唇を寄せる。

 

「―――…んっ…いたっ」

 

 首にちくんとした痛みを感じると同時に、ハクの唇が離れていく。

 そしてそこには、見事なまでの赤い印――――。

 

「ついたよ。千尋」

 満足げにハクは微笑む。

 千尋が、彼から手渡された鏡を見ると、確かに首筋に赤いキスマークがついたいた。

 

 ハクがつけた、ハクの印…

 

 じっと印を見ていると、だんだん恥ずかしくなってくる。

 

「千尋…」

「な、なあに?」

「今度は千尋が私につけてくれるかい?」

「で、でも…さっき失敗しちゃったし…」

 

 先ほど、いくらがんばってもうまくいかなかったことを思い出す。

 でも、わたしの説明でハクが成功してるわけで…

 

「ハクはどうやったの?」

 なんだかアベコベのような気もするけど……

「さっきより強く吸ってみるといい」

「…わかった…」

 

 千尋はどきどきしながら、ハクの白い首に唇を落とす。

 

「…んっ……」

 

 自分的にはかなり強く吸ってると思うけど…これでいいのかしら?

 少し顔を上げて確認しても、うっすらと桃色になっているだけで、赤い印はついていない。

 

「まだだめなのー?」

 

 彼女は気合をいれて、再度チャレンジする。

 

 強く―――――。

 強く―――――。

 強く―――――…

 

「ぶっ」

 

 どうやら強く吸った際、唇の端から空気が入ったらしく、キテレツな音が出てしまう。

 

「ハク!!笑わないの!!!」

 くすくすと笑うハクのせいで、顔が赤くなっていく。

「ご、ごめん…あまりにも千尋が可愛くて…」

「! がんばってるのに!!」

 それでもまだ笑っているハクの首に、今度こそっ…!とキスをする。

 

 

 

 

 

「―――…はぁ……やっとついた…」

 ハクがつけたものよりは、多少赤みが薄いが、ひとまず誰が見ても『キスマーク』だとわかる印が白い首筋に浮かび上がっていた。

「お疲れ」

 ハクは千尋の髪を撫でながら、くすりと笑う。

「あー…風船いっぱい膨らませた時みたい…

 ほっぺたが変な感じ…」

 なんでみんな、こんな大変なのにつけたがるんだろう?

 色気も何もあったものじゃないが、こんなに大変だとは思わなかった…全然…

「千尋…これが消えたら、またつけてくれるんでしょう…?」

 ハクは上機嫌で、首元を示す。

「えええ!?こんなに大変なのに〜?」

「私も千尋の印が消える前にまたつけるから……

 それに…

 何度かしたら、コツも掴むだろうし」

「え……?うん…」

 でも、キスマークつけるのがうまくなっても、あんまり自慢できないよなと思う。

 って言うか、してたらかなり危険な人だって!

 

 

 ―――それでも。

 ハクにわたしの印がついている。

 わたしにハクの印がついている。

 自分の想いの印―――…自分のものだという所有印。

 単純だけど、それだけで嬉しい。

 

 

 それに、ハクも何だか機嫌がいいし、がんばった甲斐があったかな…とか。

 

 

 

 千尋は、大変だったけど、練習しようかな…と思う。

 練習はきっと実地でだと思うけれど。

 

 

 

 

相変わらず意味不明でごめんなさい…
取り合えず、情景をいっさい出さないでみました。
湯屋でのシチュエーションもアリだと思うし、現代版でもアリだと思うし…
どちらのイメージでしたでしょうか?