After School 4o'clock

 

 

 

 

登場人物

 千尋 長くはないポニーテール。快活な少女。琥珀が好き。

 琥珀 肩ほどの黒髪の線の細い少年。美形。千尋より1学年上。

設定

 季節は秋。校舎内。登場人物は全員制服。

 

 

 

 

「じゃ、荻野さん、これまとめておいてくれるかい?」

「は、はい。センパイ…」

 

 上で議事録の仕事を頼んでいるのが、委員会長の琥珀。

 で、センパイと答えたのが、無理やり書記にされた千尋。

 二人は校内でも有名ならぶらぶカップルなのだが、流石に委員会の時間に

 

 「じゃ、これ頼んだよ、千尋」

 「うん、ハク☆」

 

 なーんて。

 コレじゃまずいだろうと、なれない名前を呼び合う。

 

 琥珀の成績はトップクラス。もちろんそんな最高学年の生徒には、もれなく委員会や機関の役職がくっついてくる。本人が望む望まないにかかわらず。

 そんなワケでハクも半ば無理やり、委員長にされてしまったわけで。

 なら…と、長の権力をフルに活用して、意図的に同じ委員にさせた千尋を書記にしてしまった。

 委員会の後、「議事を纏めるから」と二人っきりで残れるからだ。

 

 あまりに私情極まりないのだが、二人は先生たちも公認しているオツキアイをしているため、誰も何も言えない。

 トップクラスの成績の琥珀と、成績はどっこいどっこいでも、生徒や先生方に人気があってスレていない千尋の組み合わせは、ハタから見たら超健全☆

 ――――…まぁ、実際のところは別として。

 だから委員会の後、校舎の隅の図書室(しかも準備室だから誰も来ない)で二人っきりになろうとも、だーれも疑わない。

 たとえ、二人っきりになったとたんに、急にイチャイチャしてたとしても、誰もその事実を知らないのだから。

 

 

 

 そんなワケで今日も閉館した図書室。

 誰も来ない準備室。

 千尋の隣に琥珀が座って。

 二人はいつものように議事録を纏めていた。(※注 でもまとめているのは千尋だけ。)

 

 

「ちょっ……ハク!だめだってば〜!!

 あとちょっとだから・………っん…」

 ついさっきの議事結果をまとめている最中。

 琥珀は最初、じっと千尋がノートを書いているのを見ていたが。

 

 自分たち以外誰もいない部屋。

 一生懸命な千尋の顔。

 

 琥珀は千尋の体を自分の方に向け、彼女の唇を奪う。

 

「んんんっ……っ」

 こんな時間、誰も来ないってわかっていても。

 やっぱりココは学校、いつ誰が来るかわからない。

 誰が見ているかわからない。

 そんな緊張感もあって、学校でのキスはいつもよりドキドキしてしまう。

 

「もう!

 ちょっと待ってよー!進まないじゃないっ」

「千尋が可愛いから、つい」

「〜〜〜〜〜〜〜〜…っ」

 

 とりあえず体は離れたので、千尋は先ほどの続きに勤しむ事にする。

 ……脚をさわさわと触っている手は、この際無視することに決めた。

 

 えーと…次回までに、返却方法改善案を各クラスごとにまとめてくる。と…

 次回議題…次期委員の選バツ及び引継ぎ……

 

 そこまで書いて、千尋の手は止まってしまう。

 

 引継ぎ……

 つまり。

 

 3年は卒業してしまうっていうコトで。

 

「どうしたんだい?」

 一向に進まない千尋の手に気付き、覗き込むように問い掛ける。

 どうやら自分のせいで止まってる訳ではなさそうだった。

 

「……ハクとこうして同じ学校にいられるのも、あとちょっとなんだなぁって思って…」

「千尋……」

「わたしじゃハクが受験する学校なんて、絶対無理だもの」

 

 前々から、琥珀は「私の力で何とかする」と言っているのだが、千尋はそれをよしとはしなかった。

 「そんなの、自分の力じゃないからイヤ」

 そう言ってにこりと笑うのだ。

 確かに、千尋だったらそう言うだろとは思っていたし、そこが千尋のいい所なのだから、強くは言えない。

 だったら自分が千尋に合せる…それも何度も思うのだが、実際問題は一年後。計画どおりに行くとも限らない。

 

「じゃぁ、千尋に『先輩』と呼ばれるのも、後少しなんだね」

「ハク…」

「結構気に入っていたのに。

 いつも呼ぶ前にちょっとためらうところとか…」

「だって!やっぱり恥ずかしいし…」

「躊躇いがちに呼ばれたときなんて、何度その場で抱きしめたいと思ったことか…」

 

 ……ソンナコト思われてたワケ…

 

 心の底から、ハクが思い留まってくれていてよかった…と千尋は思う。

 最初の頃に比べたら、周りからからかわれる事は減ったし、笑われることも減ったけど…

 危ない危ない。

 

「折角だし…名前付きで『先輩』と呼んでくれないかいかな?」

「え…ええ??今?」

「今」

 

 千尋はいつも、琥珀をセンパイと呼ぶとき、前に名前を付けようかどうしようか…と悩んでしまう。

 きっとそれが躊躇っているように見えるんだろうけど。

 

「――――――――――…こ、琥珀センパイ…」

「千尋!」

「きゃぁぁぁぁっ、ハ、ハク!!!誰か来たらどうするのっ!」

 

 予想通りしっかりと抱きしめられた千尋は、顔を真っ赤にして身を捩る。

「千尋が大声を出さなければ誰も来ないよ」

「―――――――っ」

 黄昏の柔らかな光の中。

 耳元で囁かれて、啄ばむようにキスされて。

「荻野……」

 わざと名字で呼ばれる。

 それは、『千』と呼ばれるときとはまた違った不思議な感じがして。

 千尋も流されるように…琥珀を呼ぶ。

「センパイ――――――…」

 

 

 

 

 

 

 すっかり遅くなってしまった帰り道。

「千尋…心配しなくても、私はずっと千尋と一緒だよ」

「ハク…」

 先ほどのことを気にしてくれてるんだ…と、千尋はくすぐったくなる。

「千尋に先輩って呼ばれるのも良かったけど、やっぱり机を並べるのも捨てがたいしね」

「…?」

 言ってることは良く判らないが、深く聞いてはイケナイような気がして、その話は流れてしまうのだが……

 

 

 

 

 新学期――――――。

 

 卒業したはずのハクがなんで自分の隣にいるの!?と千尋は目を白黒させる。

 しかも周りはだれも不思議に思っていない。

「なんでっ……ココにハクがいるの!?」

「同じ教室で千尋とずっと過ごすのも捨てがたいから」

 どうやら彼は、それだけの理由で学校全員を騙していくつもりらしい。

 いや、学校だけでなく、彼が受験した学校…その他諸々。

「それに3年には修学旅行がある。千尋一人では行かせたくないし」

 去年の悩みは何だったのでしょう……(泣)

 

 いるはずのない彼がいる。

 その矛盾に気づいているのは学校内・教室内で千尋だけ。

 

 

 わざわざ、出席番号がペアになるように仕組んでいた彼に脱帽すると共に、

 今年の一年は長そうだ……

 新学期早々、彼女は頭を悩ませるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

5000を踏まれた 来々さんに捧げさせていただきます。
「ハク千学園ラブ」というリクエストでした。
もらって下さると嬉しいです。
ハクの名前をどうしようか悩んだんですよ。
『琥珀』って、響きもいいし、字もかっこいいけれど、
河で琥珀色って……どぶ川??とか思ってみたり…(死)
で、それじゃ納得いかないので自分なりに「アンバー(琥珀)が採れた河」と
思い込む事にしました。海で採れるんだ、河でも採れるだろうと……苦しい。
プラス。
わ〜い、学園もの☆学校って言ったら、体育倉庫に音楽室、茶室、屋上〜とか
楽しく考えていたのですが、ふとリクエストが「学園ラブ」だったことに気付き…
そう、「学園エロ」ではないんだ…!!と思考をリセットいたしました(阿呆)
……いつかセーラー服脱がせてみたいです(死)