湯女

 

 

 

 

 お互いの世界を認め―――――。

 お互いの全てを消化して―――――。

 お互いの理を理解すれば、二つの世界を行き来するのは思ったほど難しくない。

 きっと、どこでもすぐそばに、湯婆婆が支配するあの世界がある。

 

 

 近所に遊びに行くような感じで、千尋は良く湯屋を訪れる。

 もちろん、湯屋にいる間は下働きとしての仕事をこなしていく。

 「いつまた、帰れなくなるかもしれないから…」

 と、最初のうちハクは、よく言ったが、

 

「だって。こっちに来ればハクに会えるんだもの。」

 

 そう言って惜しみなく笑顔を向けられてしまうと、強く言えない。

 ハクだって千尋に会えることはとても嬉しいことだったから…

 

 

 そんなこんなで早数年――――。

 

 

 千尋は、初めて来た頃より、リンほどじゃないが…背も伸び、体も丸く、女性らしくなってきた。そのことがハクを悩ませていることも知らず、千尋は今日も湯屋を訪れる。

「ハーク。

 明日ね、創立記念で休みだから、今日は泊まりで働こうと思って来ちゃった。」

 そろそろ開店前の準備をしようと、支度を整えていたハクの部屋に、千尋が飛び込んでくる。

「千尋――――。」

「そしたら明日の朝、一緒に丘まで行ってくれる?」

 ハクの隣に座り込み、下から見上げるようにお願いする。

 可愛らしさはいつまでも変わらない―――…

 いや、可愛らしさに付け加え、女らしくなった彼女は、下働きにはもったいないという声も、油屋の中で上がりだしている。

 …もちろん、それらは全て彼が阻止しているのだが。

 従業員はいい。自分の手の中にあるのだから。

 ただ、客ばかりはどう出るか判らない……

 

「千尋、良くお聞き」

「うん…で、ねぇ?

 明日の朝は?」

「ああ、もちろん行くよ、そんなことより―――…」

 ハクは、ずっと心に思っていたことを口にした。

「千尋、もし客に「湯女か?」と聞かれたら、違うとだけ言うんだよ」

「ゆな?」

 

 何のことか判らないが、彼の話し方は、まるで自分が初めて迷い込んだ時に「働きたいとだけ言うんだ」と言った時に似ている。

 つまり…絶対にそうだとは言ってはいけないってコトで。

 

「うん、わかった。

 …でもゆなってなーに?」

 

 油屋は湯屋だ。湯屋の売りはもちろん色々な湯だったり、料理だったり…

 そして欠かせないのが湯女だ。

 湯女が居るのと居ないのでは、売上は倍…いや、それ以上違うだろう。

「ねぇ、だからゆなって?」

 

―――――……

 

「…湯女とは、客と共に湯に入り、客を洗い、そのあと部屋に上がって客に奉仕をする女だ。」

 初め、意味を理解できなかった千尋は、もう一度彼の言ったことを思い返してみる。

 

―――客と共に湯に入り…

 

―――客を洗い…

 

―――部屋に上がって――奉仕って…!!!?

 

 

―――それって向こうで言うソ〇プってやつじゃぁ!!!

 

 

「ちっ ちがう!わたしそんなことしない!」

「判っている。だから、「湯女か?」と聞かれたら違うとだけ言うんだ」

 千尋は真っ赤になって、ぶんぶんと首を縦に振る。

 

 これだけ言えば、間違ってもはいとは言わないだろうと思いつつも、念には念を入れる。

「それでもね…湯女は下働きに比べて、何倍も給金がいいんだ」

 彼が帳簿を預かっている、ということは、全員の給金を計算しているのも彼な訳で。

 従業員の中で、一番給金が高いのは湯女だと言うことも、一番低いのが下働きだということも知っている。

「な、何倍…」

 ごくりと千尋の咽喉がなるのを、ハクは見逃さなかった。

 きっと自分の給金から、どのくらいになるか計算してるんだろう。

「だからね、もし、間違ってでも―――

 そんなことはないと思うけど、「はい」なんて言ったりしたら…」

「……言ったりしたら…?」

 

 

「私が千尋を買うからね?」

 

 

「いっっっっ 言わない!!言わないってばーー!!!」

 

 あわててパタパタと手を振り…真っ赤になった千尋を見て、ふと、ハクは思い直す。

 

 

 ―――自分が千尋を買う。

 

 

 そんな倒錯的なシチュエーションも、なかなかどうして。

 楽しそうではないか。

 

 

「そういえば…千尋、さっき、湯女の給金を知りたそうだったよね?」

「え…う、うん。教えてくれるんなら…」

 ある意味ハクしか知らないことだし。

「確か…明日は学校が休みだって言ってたよね?」

「そ、そうだけど……?」

 

「っ!!!!」

 

「いいっ!やっぱり知らなくていいですーーー!!!!」

 千尋は、やっと彼の考えてることが読め、丁重に辞退する。

 

 

「遠慮しなくても………

 一番高い日当を教えてあげる」

 

 

 

 …………………………………

 

 

 

 

 そののち、彼女はしばらくの間、油屋のおねーサマ方をある意味尊敬すると共に、

 

「湯屋って………………湯屋って…………………………………………(以下略)」

 

 大人のジジョーを知ってしまい、湯屋にくる神々を見るたびに、悶々と「その後」を考えてしまうのでした……。

 

 

 

 

 

……なんか終わり方がすっきりしないのですが…
あれ以上続けちゃまずいかなと…。
無理やり切ったのがいけないんでしょうか…はう
そしてやっぱり表情を出せないのって
(いや…私が書くの下手だからなんですが…)難しい……
ホントすみませんすみませんすみません……