背後からそっと抱き締められ、大きな温もりに包まれた。
自分の低めの体温に相手の熱が移ってくる。
その人となりを表すような温もりはいつもと変わりがない。
そう淀みなく思うのは、身体がもうその温もりを覚えてしまっているからだ。
かさついた大きな手がゆっくりと身体のラインを辿っていく。
腰から肩へ。腕から指先へ。
耳元では低めの声が、名を甘く囁く。
もたらされる愛撫はただただ優しく、性急さの欠片もなく。
どうやら、こんな風に「優しく身体から口説く」のが。
この相手の、ここ最近のブームらしい。
だが、ぬるま湯に浸ったような愛撫を繰り返すくせに、肌を這う指先は確かな欲を持っていることを隠そうとしない。
何故なら。
冷たく閉ざされた身体が「ソノ気」になるのを待っているのだ。
「何かったりーことやってんだてめえは」
(
「・・・せっかく俺がムード盛り上げようと思って頑張ってんのに、
ひでえってばよ・・」
「柄にもねえことしてんじゃねえよ」
「なにをっ〜」
「うわっ、バカ、やめろ!くすぐってえだろーが」
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