恋人たちの Sweet Night −ナルトVer.−
なあ。
所謂「男の夢」ってヤツの話をしようと思うんだけど。
オレの話、聞いてくれるか?
もう直ぐクリスマスだろ?
オレってば、ずっと一人だったから、ガキのころはクリスマスなんて知らなかった。
ただ、この時期になると木ノ葉の町並みもすんげーきらびやかになってさ。
町を行くみんなの顔も心なしかウキウキと楽しそうで、オレは一人暗い部屋に帰るのがすんげー嫌だったんだってばよ。
その後サスケと愛し合うようになって、一人の暗い部屋からオレは抜け出すことが出来た。
クリスマスの意味も知ったし、クリスマスだからと言って飲んだり食ったりもするようになった。
特別暖かく感じるその日が、オレは好きだった。
サスケとは、クリスマスを一緒に過ごせることもあれば、過ごせないこともあった。
いや、下忍から中忍の時までは、比較的一緒に過ごせたと思う。
だけど、オレが上忍になって、サスケが暗部に入ると、オレ達がクリスマスに一緒に過ごせる事はほとんどなくなった。
ちょうどそのころ、オレはサイから借りた外国のインテリア雑誌ってヤツで、クリスマスツリーってヤツを室内に飾ってる写真を見たんだ。
灯りを落とした暖かい部屋。
外はきっと雪が降ってるんだろうけど、部屋の中は淡いオレンジ色の灯りがあって、すごく暖かそうなんだ。
部屋の中にはでっかいクリスマスツリーを飾って、その灯りがなんとも綺麗でさ。
暖炉には薪がくべてあって、すんげー暖かそうで。
オレンジ色の灯りは、暖炉の火によるものだ。
暖炉の前には、毛皮の敷物みてーなのが敷いてあって。
少し離れたテーブルには、ろうそくの灯りとクリスマスのご馳走。
オレはウットリした。
外国のクリスマスってば、マジですげー。
オレはサスケに、その雑誌を見せた。
「すんげーきれいじゃね?こんなでっかいクリスマスツリー飾ってさ、その前でイチャイチャできたら、とんでもなく幸せじゃね?オレもクリスマスツリーが欲しいってばよ!」
だけど、サスケはどこまでもドライだった。
サスケはオレの言葉を例の鼻で笑うような笑い方で一蹴した。
「フン、くっだらねぇ。大体お前の家のどこに、こんなでっかいツリーが入るって言うんだ、ほんとにウスラトンカチだな」
その話はそこで立ち消えになった。
サスケの言う事はほんとにもっともで、オレはがっくりと肩を落としたんだ。
でも、それはオレの中で夢になったんだ。
いつか、そんなロマンティックで暖かくってイチャイチャしたクリスマスを過ごしてみてぇ。
サスケと一緒に、愛の一夜を過ごすんだってばよ。
もちろん、クリスマスツリーの前でな。
だから。
オレは、火影になった今年こそ、長い間の夢をかなえてみたいと思うんだ。
◇ ◇ ◇
オレの朝は早い。
火影になるまでは、非番の時はぜってぇ朝寝坊するって決めてたオレだけど、さすがに火影になったら全然朝寝坊なんてしてる暇はない。
時には隣で眠ってるサスケのあられもない姿に朝っぱらから大変なことになったりするけど、それだって時間をかけてどうこうしてる時間はあまりない。
火影の仕事は、朝から盛りだくさんなんだ。
朝寝坊だけじゃない。
好きなときに一楽にも行けねぇし、一楽のおっちゃんも
「ナルト、じゃねぇや、火影様」
なんて呼ぶし、先代の綱手のバァちゃんやご意見番たちもうるせぇし、イルカ先生だってやっぱり口うるさい。
結構窮屈に生活してると思う。
でも、オレはその生活さえ気に入ってる。
オレは火影を目指してた。その夢がようやくかなったからだ。
オレは、三代目のじいちゃんみてぇな落ち着いた火影よりも、オレの親父のような、親しみを持って接してもらえる、しかもとんでもなく強い火影を目指してる。
だけど、じいちゃんだって強かったんだぜ?
それに、里の人を身をもって守るってことを、オレに教えてくれた。
オレの親父もそうだったって話だ。
オレは、今までの火影に恥じないように、日々頑張ってるんだ。
それに火影になってからは、いつだってオレの側にはサスケが居てくれて、公私共に生活を共にしてくれている。
さすがに執務中はイチャイチャは出来ねぇし、時々サスケはオレが誘うと嫌な顔をするけど、でも、そんなサスケさえ愛しくて、その場で押し倒したいくらい可愛いと思うんだから、オレもオワッテル。
嫌な顔をする癖して、最後はオレの熱意に負けて上に乗ってくれるサスケが、オレは大好きなんだ。
そんな時、サスケはオレを愛してくれてるってマジメに思う。
そんなサスケバカを地で行ってるオレだけど、実は今回はサスケを一週間ほど任務に出すことにした。
ちょうどクリスマスの10日前だった。
サスケは最初その話を聞いたとき
「本気か?」
と非常に疑わしそうな顔をした。
それはそうだろうと思う。
だってオレは、滅多な事ではサスケを任務に出さないからだ。
だけど、今回はサスケをどうしても任務に出す必要があったんだ。
もちろん、それなりの理由はある。
ひとつには、大名自ら、サスケ始めオレの片腕と呼ばれるヤツに任務を依頼したい、と言ってきたっていうことだ。
これにはオレは、最初サイを出そうと思っていた。
サイだってオレの立派な片腕の一人だ。
だけど、もしかしたら、これはすんげーチャンスが回ってきたのか?と思ったんだ。
サスケと一週間離れるのは正直辛い。
オレも辛いがオレのムスコも辛いと思う。
その間、オレはサスケの下着をおかずに右手生活をしなきゃならない。
だって、オレってばサスケ一筋だから、サスケの居ない間に他のヤツに手を出すなんて、全然考えらんねぇんだ。
だけど、オレはそれでもサスケを任務に出そうと思った。
ひとつ、酷く魅力的な計画を思いついたんだってばよ。
その計画は、前に話した「男の夢」実現ってヤツだ。
そう、オレは、クリスマスツリーの夢をどうしても諦め切れなかった。
だけど、サスケは相変わらずそういうところ全然ムードが無いヤツだから、オレがツリーの事を持ち出してもきっと鼻で笑うに決まってる。
そんなサスケに、クリスマスにツリーの前でイチャイチャするってのがどれほど素晴らしいことか、教えてやるんだってばよ。
最後にはサスケもきっとウットリとして
「ナルト、今日は好きにしていいぜ」
とかあの魅力的な細腰をオレに擦り付けて言ってくれるかもしんねぇ。
オレはその計画を思いついて、無駄にテンション高く盛り上がっていた。
サスケは任務に出る直前まで変な顔をしていたし、
「おい、なんか企んでるんじゃねぇだろうな」
なんてきつーい瞳でオレを睨みつけながら言ってた(そして、その瞳を見てオレがぞくぞくしたことは今更言わなくてもわかってるだろ?)が、まさかオレがツリーを持ち込もうとしてるとは、流石のサスケも思ってねぇだろう。
一週間任務に行ったら、帰ってくるのはクリスマスイブの辺りだ。
帰ってきたサスケをツリーの前に連れて行って、イチャイチャなクリスマスを過ごす。
出来れば暖炉なんかも作ったりして、メチャメチャムードたっぷりなクリスマスにするんだ。
サスケが出発する前日、オレはさすがに寂しくて、サスケを思う存分貫いた。
「オレを忘れねぇように、オレの痕、お前の全身につけさせてくれってば…」
オレがそう囁くと、サスケはその漆黒の瞳を潤ませながら
「も…、ずっと前から…そうさせてるじゃ…ねぇ、か…」
と喘ぎながら言ってくれた。
オレはその言葉に安心して、ようやくサスケを手放すことが出来た。
だけど、やっぱり一週間は辛い。
この任務が終わったら、思い切りサスケを感じてぇ。
そう思いながら、オレは寂しい一週間を耐えていた。
「で、どうしたいんだい?」
サスケが居ない間に急遽行われることになった火影邸の改装工事に、サイは不審げな顔をした。
オレはサイを『改装責任者』に任命し、昔見せてくれたインテリア雑誌のようにリビングを模様替えしてくれ、と言ったんだ。
「だからさ、前にオレに貸してくれたインテリア雑誌みてぇに、リビングをその、外国のクリスマスみてぇにしてぇの!」
オレは喚いた。
なのに、サイは
「それってどんなのだっけ?もう全く覚えていないんだけど」
と言いやがった。
「それに」
とサイは顎に手をやって話を続ける。
「クリスマスはこの10日間だけだろ?その後の事を考えると、大幅なクリスマス仕様は余りお勧めできないんだけど」
サイは全く空気が読めねぇ。
オレは、そのクリスマスのエッチに全てをかけてるんだ!
オレはキレそうになりながら、サイと模様替えを進めていった。
「クリスマスツリーはナルトの背の高さよりも少し大きいものを手配したよ。で、ダイニングにあったテーブルを、リビングダイニングに改装した部屋にもってくればいいんだね?あとは、白いソファを手配して、ソファの前に毛皮の敷物みたいなもの?フェイクでいいんだろ?でも、なんでこんなもんまで…」
サイはそう言って、図面を見ながら溜息をついた。
「何でナルトは急にクリスマス仕様にしたいんだい?」
改めて真顔で問われると、オレも答えにくい。
オレは
「火影になって初めてのクリスマスだろ?だから、サスケにも綺麗な部屋で少しゆっくりしてもらいてぇの。それにオレ自身、こんな豪華なクリスマスを過ごしてみてぇな、ってずーっと思っててさ」
その言葉に、サイはすっかり騙された。
にこりと笑うと
「ふーん。ナルト、君はサスケに優しいね。まあ、粗●ンの君だけど、サスケへの愛は本物なんだね」
と言いやがった。
粗●ンはねぇだろうよ…。
オレがサスケにぶち込むマグナムをお前は知らねぇから、そんな失礼すぎる事を言うんだって…。
オレは一気に疲れたが、サイがなんだか誤解してくれたから、一応ホッとした。
だけど、暖炉に関しては無理そうだった。
サイに
「あのさ、暖炉をつけるには、天井を壊して煙突をつけなきゃダメなんだよ」
と言われ、オレは酷くへこんでしまった。
暖炉は無理かもしんねぇ…。
でも、どうしても暖炉に近いものが欲しい。
オレはサイに、何か手を考えてくれるよう頼んだ。
「何で急にそんな模様替えしなきゃなんねぇんだよ、ったく、お前はめんどくせーな」
執務室に戻ると、シカマルに苦笑いされた。
シカマルもわかってねぇなあ。
オレの、男の夢を…。
オレはシカマルを半分哀れみの目で見て、溜息をついた。
「愛のためだってばよ」
「はぁ?」
シカマルはそれきりそのことは聞かなくなった。
そんな風に過ごした23日の夜、リビングの改装はようやく終わった。
オレは、サイに連れられて戻った部屋に、歓喜した。
そこには、オレが夢見た空間が広がっていた。
淡いオレンジの間接照明。
オレの背丈よりも少し高いクリスマスツリーには、綺麗に飾りがつけられ、色とりどりの光が優しくツリーを輝かせている。
暖炉は断念したけど、サイが職人たちに指示してくれて、見た目は暖炉で中に最新式のヒーターを組み込んだものを作ってくれた。
ツリーの近くには白いソファ。ソファと暖炉の間には、フェイクだけど毛皮の敷物が敷いてある。
そして、少し離れたところには、二人がけの、だけど少し広めのダイニングテーブル。
「うおぉぉぉっ!最高だってばよ!」
オレはサイに抱きついた。
「うおっ、ちょ…、ナルト…」
サイは嫌そうに身を捩る。
「ありがと!ありがとな、サイ〜!!」
明日は24日。
さっきサスケからは
『明日の夕方には戻る』
と連絡が入ったし、準備万端。
明日の夜は早めに帰る、と既に皆にも知らせてあるし、抜かりなしだってばよ。
オレは、いよいよ明日に迫った愛の一夜を考えて、上機嫌で眠りについた。
→ サスケVer.