人たちの Sweet Night    −ナルサスVer.−








 2. Turn ナルト



サスケがあんまり怒るんで、オレはちょっとビビリ気味だった。
だけど、ふと気がつくと、サスケがオレを締め上げるためだろうか、オレの上に乗っかってるじゃねぇか!
サスケの位置をちょっとずらせばオレの大好きな体位だってばよ!とうっかりコーフンしてる間に、サスケはオレの胸倉を締め上げにかかった。
そうだ、サスケは怒ってるんだった。
オレは苦しくて涙目になる。
でも、オレの腹の上にサスケの尻の感触があるってのは幸せだ。
この感触、一週間の辛い右手生活が全部チャラになるぐらい幸せだってばよ。
サスケに頭を殴られててイテェのに、こんな状況でもオレはコーフンするんだなって思って、我ながらつくづくオワッテルと思う。

だけど、いつまでもサスケの好きにはさせねー。
なんと言っても、オレの男の夢がかかってるんだ!

サスケの肩をガシッと掴むと、サスケは一瞬動きを止めた。
すかさずオレは叫んだ。
「無駄遣いなんかじゃねぇってばよ!!男のロマンのためなんだってばよ!!」

「男の…、ロマン、だと?」
サスケの瞳が一瞬揺れる。
へぇ。サスケのヤツ、男の夢だとかロマンだとかって言葉にはちゃんと反応するんだな…。
オレは心の隅でサスケの新たな一面を発見してにんまりした。
今度何かあったら、この言葉、また使うってばよ。
だけど、そんな事ここで口に出したらまた写輪眼出されちまう。
オレは、一瞬怒りを引っ込めたサスケをさらに落ち着かせようと、もったいぶった声を出してみた。
「そ。男のロマン。男の夢だってばよ…」
「……何で無駄遣いが男のロマンなんだ」
サスケは低い声を出した。
その瞳は実にきつくて、まだ怒ってるのがありありと分かる。
でも、その瞳はゾクゾクするほどセクシーだ。
オレはむしゃぶりつきたくなるのを堪えて、サスケの下でマグロになってた。

それにしても、何でこう、サスケはしまり屋さんなんだろうなあ。
オレはこっそりと溜息をつく。
前から金の事ではオレを怒鳴りつける事多数だったけど(特にオレがフリルつきの白いエプロンを買った時とかさ、オーバックの下着を買った時とかさ…。あれは酷かった。でもさ、愛の小道具はいろいろ必要だ。そう思うだろ?)、今回はそれより全然マシだってばよ?
だって、いつもオレだけの時は汚くなる部屋を、逆に綺麗にしてやったんだぜ?
感謝してもらいてぇ位だってばよ…。

だけど、金の事だけでここまで怒られたのはマジメに初めてで、オレは密かに不自然さを感じる。
サスケは確かにしまり屋さんだけど、オレの上に乗っかって大喚きなんてこと、このところすっかりなかったことだ。
確かにオレは勝手に模様替えしちまったが、それだってサスケとの大切なイチャイチャ時間のためだ。さっきからオレはそう言ってる。
なのに、この怒り方は酷い。
まるでオレが浮気でもしたみてぇだってばよ…。
オレはこっそりとそう思い、この一週間の右手生活の苦しさを思い出した。
くそっ!
オレは必死で言葉を探す。
この一週間の右手生活を無駄に出来るわけねぇってば!
サスケを何とか宥めて、イチャイチャでメリーなクリスマスに持ち込むんだってばよ!
頑張れオレ!

オレは必死で考えを纏めながら、口を開いた。

「なあサスケ…。オレ達がクリスマスを一緒に過ごすのなんて、何年ぶりだと思ってるんだってばよ…」

オレは、寂しそうに聞こえるといいな、と思いながら言ってみた。
ついでに、ガシッと掴んでいたサスケの肩から指を離して、二の腕に滑らせてみる。
そこはいい感じに筋肉がついていて、それでいてオレみたいにゴツクなくて、本当にそそられるんだ。
オレはゾクリとした。
オレもゾクリとしたけど、辛い生活を強いられてたオレのムスコもゾクリとした。
だけど、サスケはオレの事をまだ睨みつけてる。
ここでサカったらおしまいだってばよ…。

オレはムスコを必死で宥めつつ、サスケが反撃に出てこない事を確認すると、オレの上に馬乗りになっているサスケの腰に腕を回してみた。
サスケの腰のラインを密かに楽しみながら、ギュッと腕を回す。
サスケは今だに不機嫌な顔をしてオレを見下ろしていたけど、オレの手を払いのける事はしなかった。
よしよし、いい感じだってばよ。

「今年はオレが火影になって、初めてのクリスマスだ。だから、お前と二人、どうしても一緒にクリスマスを過ごしたかったんだってばよ…。だって、ずっと一緒に居られるのが、一番幸せじゃねぇ?」

その言葉に、サスケの瞳が変化する。
オレの言葉に、少しは怒りを引っ込めてくれたらしい。
よし、やったぞオレ!

「それは…、オレだって…そうだ…」

サスケから珍しく愛の言葉もどきを聞けて、オレは嬉しくなる。
オレはサスケの腰をさらにしっかりと抱きしめてみた。
サスケは抵抗してこない。
オレは気を良くして、サスケの腰をゆっくりと撫で始めた。
久しぶりのこの感触。
涙が出るほど幸せだってばよ…。

「だが、それとクリスマスツリーや暖炉と、どういう関係がある…。しかも、オレがこつこつ貯めてきた金に手をつけやがって」

やっぱそこか…。
オレは今度はこれ見よがしに溜息をついてみた。
サスケには、甘えん坊さんになるのも必要なんだってばよ。
オレってば、もうサスケとの付き合いも長いからな。
サスケがどうすれば許してくれるか、結構オレも勉強してきてるんだぜ?

「お前が金を貯めてくれてたのは知ってるってばよ?オレだって、それはホント、嬉しいと思うし、ありがたいとも思ってる。でも、金の問題じゃねぇんだってばよ…。オレってば、オレが長い間夢見てた最高の一夜ってのを、今夜お前と過ごしたかっただけなんだ…」

「夢見てた…?」

サスケの瞳が揺れる。
オレに対する怒りの感情は収まってきてるみてぇだから、オレは今度はちょっと押してみる事にした。

「ああ…、サスケはもう、忘れちまったかな…。オレが昔、まだ上忍に成り立てだった頃にさ、サイに見せてもらった雑誌に載ってた外国のクリスマスの事、お前に話したことあっただろ?」

サスケはちょっと考え込んだみてぇだった。
多分サスケは覚えてねぇんだろうと思う。
サスケはそういうとこ、実にさっぱりとしたヤツで、オレは時々寂しくなるんだって。
オレはサスケに関することは何でも覚えてる方だからさ…。
自分だけがサスケに執着してるかもって思うのは、こういう時なんだ。

「オレってば、長い間ひとりだっただろ?だから、そんな幸せそうなクリスマスなんて、全然縁がなくてさ。だから、今年サスケと久しぶりに一緒に居られるーって思ったら、その夢みてぇなクリスマスを思い出して、もう、舞い上がっちまってさ」

そしてオレは、サスケをオレの腰の上に乗っけたまま、起き上がった。
座り込んだまま抱き合う姿勢になると、サスケの頬にそっと触れた。
サスケの頬はツリーの飾りの灯りでオレンジに見える。
すんげー綺麗だった。

「クリスマスツリーの綺麗な灯りの前でお前とイチャイチャしたり、美味い飯食ったりさ。外国のクリスマスみてぇに暖かそうなクリスマスをお前と過ごしてみたかったんだって…。オレってば、ずーっとそれを夢見てきたんだ…。お前にとっては全然大切な事じゃねぇかもしんねぇけど、オレにとっては、大切な夢だったんだ。それに、こっそりと豪華にしてみたら、サスケ、きっと喜んでくれるかなーって」
「ナルト…」
「でも、サスケはこんなの、喜んでくれるはずなかったんだよな…。ごめんな、サスケ」

オレはしょげ返ってみせた。

それが効いたのか、サスケはオレと目を合わせずに斜め下に目を向けたまま、ポツリと言った。

「別に、喜んでないとは言ってない…」



      ◇       ◇       ◇



オレは込み上げてくる喜びを隠すのにすんげー大変だった。
サスケは今、喜んでないとは言ってない、って言ったよな?
サスケはいつまでも素直じゃねぇから、ストレートな気持ちが聞けるなんて元から期待してねぇんだけど、それでもサスケが多分オレを許してくれてるとわかったんで、オレはホッとした。

「じゃあ、ちっとは喜んでくれたのか?」
オレがサスケの顔を覗き込むと、サスケは相変わらず斜め下を向いたまま、
「キタネェよりはいい…」
とすんげー可愛くねぇ事を言う。
でも、さっきまでの怒りは全く消えていて、オレはホッとするのと同時に、少し不思議に思う。

金は確かに使った。
でも、オレってば火影だし、サスケだっていい給料だ。
そんなに目くじら立てるほどの金額じゃねぇのに…。
「じゃあさ、何でそんなに怒ったんだ?金の事か?」
オレの問いかけにサスケは目に見えてうろたえた。
オレはサスケの顔を覗き込む。
サスケはオレと視線を合わせずに
「金の事だけじゃねぇ…」
と言った。
「じゃあ何の事だよ…」
オレは少し怒ってるように見えるといいな、と思いながら聞く。
サスケはぷいっと顔を背け
「何でもねぇ…」
と無愛想に言った。
「何だよ。散々オレを殴ったんだ。理由ぐらい聞かせろって」
オレはサスケの顎を捉え、オレの方を無理やり向かせた。
だけど、サスケは決まり悪いらしく、オレと目を合わせようとしない。

オレは軽く笑った。
ったく、強情なヤツだってばよ…。
何でかな、オレはそんなサスケが愛しくてさ。
つい許しちまうんだって。

「じゃあ、今日はオレとここでクリスマスしてくれるか?」
にやりと笑って聞いてみた。
サスケは舌打ちをすると
「仕方ねぇだろ…。こんな風に全部模様替えしちまいやがって…。ほんとにお前はいつまで経ってもウスラトンカチだな」
と言う。

オレはへらりと笑うと、サスケに抱きついた。

「ありがとな、サスケ〜!」

そのまま毛皮の敷物の上に押し倒した。

「ば…っ、イテェじゃねぇか…」

サスケはオレの腕の中でもがくけど、オレは抱きしめたサスケの感触に、もうスイッチ入っちまった。
だって一週間ぶりなんだぜ?
しかも、オレの夢見たクリスマスツリーの前でのエッチが、今実現しそうなんだ!
サスケの体も、その下の敷物も、淡いオレンジの光で実にいい色になってるし、敷物の上に散らばるサスケの黒髪がすんげー色っぽくてさ。
なんて言うの?毛皮の上のサスケの裸を思い浮かべるだけで、オレってばイっちまいそうだってばよ。
すげーヤラシイサスケを想像して、オレってば、今からもう大コーフンだ。

「じゃあさ、仲直りのチュウな…」

オレはサスケを組み敷くと、そっと唇を寄せた。











 → 3. Turn サスケ