好きスキ大好き愛してるっ  9


「ねぇ……パパ」
「あーあ……また呼び方戻っちゃった」
 終わったあとの、心地よいけだるさ。パパの胸にべったりとくっついて、繋がったままでいる幸せを堪能して、パパを呼んだらものすごく、残念そうにパパがため息をつく。
「だって、パパはパパだもん」
 ぷーってほっぺた膨らませて体を離してパパを見る。
「はいはい。で、なぁに?」
「………………」
「……忘れたのね」
 くしゃくしゃと私の頭をなでて、パパが笑う。
「パパは、私にパパって呼ばれるの、イヤ?」
「イヤって言うか……もう慣れました。美奈は初めっから俺のことパパって呼んでたからなぁ」
「だってだって、パパはパパだったんだもん」
「で、美奈はパパとこんなことするんだ?」
「ひゃぁんっ」
 パパが両手で、胸を揉む。
「痛い痛いってなかなかさせてくれなかったのがウソみたいに、今はこんなエッチになっちゃったんだ?」
「だっ……ホントに痛かったんだもん。初めての時だってやめてって言ったのにパパが無理にするからぁ」
「それでも、美奈が中学卒業するまではおとなしくガマンしてたでしょ」
 触られて勃っちゃった胸の頂をいじりながら、パパが言う。
「んもーう。開き直ってるぅ あの時、血は止まらないしあそこは痛くて動けないし、ママにはばれちゃうし、大変だったのよぅ? もしかして忘れちゃったの?」
「忘れてない忘れてない。美奈のお母さん怖かったもんなぁ 俺、女の人にグーで殴り飛ばされたのあの時だけよ?」
「当たり前ですぅ! 私はもっと痛かったんだからね」
 俺も痛かったっていいながら、楽しいことでも思い出してるように笑ってパパが言う。
「でもちゃんと、約束は守ったでしょ?」
 パパの両手が、私のほっぺたを挟み込む。
「いい男になって迎えに行きますって」
「うん」
 ママには『青二才が背広着ただけ』とかひどいこと言われてたけど、でもパパはがんばって、建築士の資格を取って、ちゃんと私を迎えにきてくれた。
 ああ、その間逢ってなかったわけじゃないんだけど。
「美奈のうちは母一人娘一人だったから、攫っちゃうのは気が引けたんだけどな」
「でも今は、あっちに由奈ちゃんがいるから」
 これも、当たり前の話だけど、中学に入ったばっかりの女の子、一人暮らしなんかさせられないもの。
「そうだな」
 笑ってるパパに軽いキスをする。
「ねぇ……パパ」
「ん?」
「………やっぱりいいや」
 じっと見つめられたら言えなくなっちゃった。
「って、また忘れちゃったの?」
「ちがーうっ」
「じゃあ言ってよ」
「……目……閉じてくれたら……」
「ハイ」
 私が言うが早いか、パパが目を閉じる。
「あのね、私、パパのこと……」
 すっごく、すごくね。言葉じゃ足らないくらいにね。
「好きで好きで、大好き」
 パパが、目を開けて、いつもの笑顔で。
「俺も、美奈のこと愛してるよ」

                                        2002.8.16=fin.





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