4−1 由紀子の場所
「やっぱり、由紀子には何着せても似合うねぇ」
 八月、お盆も終わって、最後の土曜日にいつも町内であるお祭り。
 毎年、お祭りは浴衣。おばあちゃんが着せてくれる浴衣で行くの。
 それと、今年は道彦君に貰ったバレッタで髪を上げてみた。それを見た駿君が、きらきらできれーねーって言ってくれて、去年の今日よりかなり幸せ。
 夏祭りは、夏のイベントの中で一番好き。海もキャンプも行けないけど、夏祭りなら平気。夏に腕や足を出していなくても別にかまわない格好って、浴衣くらいなものだから、浴衣も好き。
「この浴衣もだいぶ小さくなったねぇやっぱり新しいの作ったほうがよかったかねぇ」
「まだ大丈夫だよ。それに来年は実習で作るから」
 ちょっと小さめだけど、この浴衣もまだ着れないことはない。
「それに、これ佐貴ちゃんが買ってくれたやつだし」
「いいんだよ。どうせ金なんかバカほどかせいでんだから、浴衣の一枚や二枚毎年買わせたって」
 けっ……て、おばあちゃんが憎まれ口を叩く。
「だーもう! そっちこそ戦死したじーさまの遺族年金とかめちゃめちゃもらってんじゃん! 自分教師だったからそっちからも年金信じらんない額あるでしょ!? 仕事もしてないくせに丸儲け? 私は、私で稼いでんの!! 由紀子、言いなさい! 浴衣の五枚や十枚いっくらでも買ってあげるわよ!!」
 日が暮れるまでに駿君とお祭りに行ってた佐貴ちゃんが、たこやきややきそばをつつきながらおばあちゃんに三倍返し。
「ほんとにかわいげのない子だね。佐貴子は。小さい頃から憎たらしい口きいてばっかり、少しは年寄りを労わろうとかそういう気持ちはないのかい?」
 で、対するおばあちゃんも負けてなんかいない。私にしてみたら、二人ともそっくりなんだけど。
「そうね、労わりがいのある尊敬できる人ならそうするかもね」
「全く、母親の育て方が悪いとこうもねじくれるものなのかと思うと、駿壱(しゅんいち)がかわいそうになってくるよ」
「へっへーん。残念だけど私は父さん見て育ったのよ。だから今の仕事やってんだから。ってことは、私の根底に流れているものってのは、ばーさまから来てんのさ。まずは自分が息子にどういう教育施したか考えなよ」
 ……佐貴ちゃん……
 なんとなく剣呑な空気が流れ出したのを察したのか、佐貴ちゃんの隣でたこ焼きを食べていた駿君が、そっと私の隣にくる。もちろん、たこ焼き持ったまま。この子って、ほんとにいろんなことに敏感なのよね。
「よかったねぇ、駿壱はお父さんに似ていい子に育って」
「顔は私に似たのよ。それは良かったわよね、駿? あれ? どうしたの? 駿」
 さっきまで隣にいた駿君に話しかけてたらしい佐貴ちゃんが、きょろきょろ見まわしてちゃっかり逃げ出した駿君を探す。
「ねえねえ由紀ちゃん、なんでお母さんとばーさまはいっつもケンカしてるの?」
 駿君は、美岬おばさんのことを『おばあちゃん』と呼び、私達のおばあちゃんのことは、佐貴ちゃんの呼び方がうつったらしく『ばーさま』って呼ぶ。
「幼稚園の長田先生はね、ケンカしちゃダメって。自分がされて悲しいことはお友達にもしたらダメって言うのに、なんでケンカするのかなぁ」
「それはねーきっと佐貴ちゃんとおばあちゃんはホントは仲良しだからだよ。仲良しじゃないと、いつもケンカなんかできないでしょう?」
「「違うわよ!!」」
 否定の言葉がきれいにハモる。
 相変わらずだよね。
 なんでかしらないけど、本気で合わないわけじゃないのよ。この二人。
「ゆーっこーお祭りいこー」
 がらがらと玄関が開いて、京香と創子が誘いに来てくれた。
「はーい! じゃあ、行ってくるね。花火見終わったら帰ってくるね。あっそうだ、お土産なにがいい?」
 お祭りのある神社は、駅と反対だから、うちが一番近いのね。
「由紀子、お小遣いある? これ持ってきなさい」
 そう言って、佐貴ちゃんが財布から千円札を何枚か出して有無を言わさず握らされる。
「いいよぅ、おばさんとおじさんと、おばあちゃんにも、みんなにもらってるから十分足りてるって」
「がー! だからよ!! ばーさまから貰っといて私からのは受け取れないとでも!?」
 どうしてそう変なとこで意地張るのかしら。
「そうだよ、貰っときなさい由紀子。今日使わなくてもとっておいたらいいんだからね。こういうときにむしりとらないでどうするんだい?」
 おばあちゃんも……
「ほら! 二人が待っててくれてるでしょ? 行ってきなさいって」
「ゆきちゃんいってらっしゃーい」
「土産は人形焼か甘栗ね。さっきはまだ店が立ってなくて買えなかったのよ」
「また佐貴子は子供にたかって!!」
「だからお小遣いあげてるんじゃない! ばーさまは黙ってて」
「やだねぇ見かえり期待して子供に金渡すなんて」
「ったくなんでそう人の揚げ足ばっかり取るわけ? そう言わないと由紀子使わなかったお金また返そうとするでしょう!!」
「どうだかねぇ」
「きーむかつくー!!」
 ……………
「相変わらずだね、佐貴さんとおばあさん」
 家の中を覗くようにしながら、京香がそう言う。玄関を閉めてもなお聞こえてくる二人の言い争い。ご近所じゃ有名なんだわ……
「でも悪い人達じゃないのよ。私には二人ともやさしいし」
 今でこそ口ゲンカで済んでるけど、私がこの家に来る前は物も飛んでたって言うし、そう言う意味では落ちついては来てるんじゃないのかしら。
「でもすごいよね。杉田家の人達って。みんな頭いいし」
 確かに。おじさんも佐貴ちゃんも希一さんも、揃いも揃って弁護士さんだし、美岬おばさんは現在市議会議員。佐貴ちゃんの弟で、長男の隆ちゃんは都内の商社に勤めてて、次男の裕ちゃんは今アメリカに留学中。本当に私と同じ血が流れてるのか不思議なくらいサラブレットな人たちなのよ。
 からころと下駄をひきずってても、それは風流。足が悪いから歩きにくいんじゃないのって聞かれたこともあるけど、逆に変な歩きかたしてても『ああ、下駄はいてるから』で済んじゃうから平気。
「ゆっこは今年も浴衣なんだ。髪飾りもかわいいよね。いつ買ったの? そんなやつ」
「えへへ。似合う?」
「似合う似合う。髪形違うからなんか大人っぽいよ。でもゆっこの浴衣姿見ると、夏ももう終わりだなーってしみじみするよ」
 スレンダーなTシャツに、七分カットのジーンズ姿、自分だってかなりキレイ系の京香が、本当にしみじみそう言う。
「そうそう、宿題やらなきゃーって」
「あんたまだやってないの? 小石原の課題、三日で済まないよ?」
「うそ!?」
 和裁が不得意な創子が、泣きそうな顔をしている。
「うそよ。ソーコ、一日あったら仕上がるわ」
「ちがうよ。それはゆっこだから。ソーコなら三日でも無理だわきっと」
「嫌ー私まだほとんど宿題できてないのよー?」
「そりゃ自業自得でしょ。悪いけどあたしは答え見せないからね」
「うそ!? 私達友達でしょー? ね、ゆっこ、お願い」
「見せちゃダメよ!! ゆっこが甘やかすからこの子はいっつも自分でやらないんだから」
「そうね。まず自分でやって、分からないところがあったら教えてあげるから」
「えー」
「教えてもらえるだけありがたいとおもいなよ」
 本気で写すつもりだったんだろう、見せてもらえないと知った創子の不満の声に、京香がすげなく言い返す。
「それよりも課題だって! あんた本気で今夜からでもやらないと、新学期、間に合わないわよ? 小石原、新学期最初の授業じゃなくて、始業式の日に提出するようにって最後の日に念押してたの忘れたの?」
「わ、忘れてないもん……だから、今だけでも遊ぶ!!」
「はいはい」
 祭りのあかりが見えてきて、へこみかけていた創子が目を輝かす。わかりやすいよねぇ
「はしゃぎすぎるとコケるよ! ソーコ」
 笑いながら走っていく創子に、京香が呆れたように声をかける。対する創子は、コケる気配もなく器用に人並みをすり抜けて露店が立ち並ぶ方へ行ってしまい、小柄だからすぐどこに居るのか分からなくなってしまった。
「コケる前に迷子決定だな」
 本気で呆れているらしい京香が、ぼそっとつぶやいて私を見る。
「行こう。本気で見失う」
「うん」
 京香は、私と居るときは絶対に走らない。いつも合わせてゆっくり歩いてくれる。
 でも、転んでも助けてはくれない。私が嫌だって言ってから、京香は立ちあがるまで待っててくれる。
「いつもありがとね」
「なにいってんだか」
 空を見ながら、京香がそっけなくそう言う。でも本当に、私は幸せだと思う。
「あーれー? 先生だっ!」
 きょろきょろと落ちつかずにあたりを物色していた創子が、神社の境内への入口を指差して嬉しそうに言う。
 言われて目をむけると、襟がへろへろになった洗いざらしのTシャツに、ひざの擦り切れたジーパン、髪の毛伸び放題という、いっそ見事なくらいみすぼらしい感じの道彦君と。
 隣には、奈留美さんがいた。
「せんせーっ! 今日、どうしたんですか? もしかして私達の見張り?」
「非常勤講師がそんなコトするわけないよ。偶然偶然。久しぶりに来たけど、相変わらず盛況なお祭りだね」
 てってけと走って創子が道彦君のところにたどり着く。
「こんばんは。今日はすごい格好ですね。一瞬誰だか分からなかったです」
「だろ? 急に……彼女に呼び出されてさ。さっきまで研究室で寝てたから。君らに見つかるって分かってたらもうちょっとマシな格好して来たのにな」
 京香に分からなかったと言われて、洗ってあるみたいだけどあんまりきれいじゃないカンジのTシャツをつまんで笑っている。
「似合ってますよ。前髪があるからかなぁ、なんか若く見えます」
「そう? 全然貫禄ないでしょ? 新学期までには髪切るつもりなんだけど」
「えー先生、貫禄なんてあったんですかぁ?」
「西園さん、ナニ気にひどいこと言うね。でも三人とも、こんな遅くなってから来てるの?」
 姿がラフだからか、道彦君かなり気さくな感じだなぁ
「はい。メイン花火ですから。家近いんですよ。歩いて五分くらいかな」
 時刻はもうすぐ七時。八時過ぎから花火だから、境内の露店をうろうろして、花火を見る場所に移動するのにはちょうどいいくらいの時間配分。
 そのことを京香が道彦君に説明している。
 対する奈留美さんは、どっちかって言うと邪魔されたからだろうか、少し怒っている感じ。
 うーん、まだ別れてないのかな。それとも話し合って、ヨリが戻ったとか? 聞きたい、でも聞けない……
「こんばんは。この間はごちそうさまでした」
 なんとなく、楽しそうに二人とじゃべってる道彦君に声をかけづらくて、私は奈留美さんに挨拶をした。
「いいのよ。お茶の一杯や二杯。それよりかわいいわね。その浴衣」
「ありがとうございます」
 うっなんか、最後の『浴衣』ってとこにニュアンスが込められていたような気がするのは気のせい?
「明神さんや西園さんは着ないの? 浴衣」
「だめです。あたし暑いのダメだから」
「あ、私も。歩きづらいし」
 道彦君に聞かれて、ねーっと、二人が同意する。
 そうよ。暑いわよ。見てるほうは風流で涼しそうに見えるだろうけど……
「じゃあ先生、お邪魔しました」
「私達、もう行きますねー」
 お祭りの監視じゃないと分かれば、全く気にすることもないのだろう二人があっさりと道彦君に別れを告げる。私も会釈だけして、二人に背を向ける。
「あ、ゆ……根岸さん」
「はい?」
 ドキッとしながら振りかえると、道彦君はちょっと歯切れが悪い感じのあいまいな笑いを浮かべて、奈留美さんのことを気にしている感じ。
「いや、いいよ。じゃあね」
「はい。先生達も楽しんでって下さいね。今年の花火、すごいんですって」
 それだけ言って、なるべく急ぎながら、その場を離れる。
 あまり、二人と一緒には居たくなかったから。
「すごいよねーこの間見たときも美人だなって思ってたけど、間近で見たらほんとにキレイ。ああ言うのを大人の女って言うんだろうなー女医さんか。かっこいー私もああ言う人になりたいなー」
 きゃあきゃあいいながら、創子がはしゃぐ。
「ま、逆立ちして埋まってもソーコには無理だわね」
「だーもう、キッカの意地悪っ! 知ってるわよそんなの。ちょっと言ってみただけじゃん」
 創子が頬をふくらませて、言い返す。
「私はああ言う人はちょっとダメかも」
「なんで?」
「なんでって……うーん。なんとなく」
 珍しく京香が言葉を探すように言いよどむ。
「そんなんじゃわかんないよ」
「だからわからないけど、なんとなくイヤなの」
「なにそれ? キッカらしくない。ゆっこは? どう? あの人」
「奈留美さん?」
「ナルミさんっていうの? あの人。なんでゆっこ、名前知ってるの?」
 うが。失言だわ。
「病院で逢ったのよ。検査に行った時。その時名前教えてもらって、お茶おごってもらったの」
「えーゆっこだけー?」
 ずるいと言いたそうな顔で創子が私を見上げている。
「なに言ってんの、ほら、金魚すくうんでしょ?」
「すくうすくうっ!」
 喋りながら歩いてて、通り過ぎかけた金魚すくいの露店に戻って、創子がとっととしゃがみ込む。
「ほんと、ソーコの脳みそニワトリ並よね」
 ………確かに。
「おっちゃーん、一回」
 的屋の親父さんにお金を払って和紙の張られたすくうやつとブリキの器を手に創子はもう臨戦体勢に突入している。
「あたしもやる。ゆっこは? やっぱりやらないの?」
「うん。二人がやってるの見てる」
 金魚をすくうには、やっぱり両手が必要。浴衣なら、袖を上げないといけないから。
「でもゆっこ、昔はやったことあるでしょ? 金魚すくい。」
 がつがつと金魚を追い掛け回しながら、創子が聞いてくる。
「ううん。小さい頃も金魚すくいだけはさせてもらえなかったから……水が汚いとか金魚はすぐ死んじゃうからって」
「じゃあ一回もやったことないの!? ほんとに?」
 速攻で一枚目の紙を破って、新しいのと交換してもらいながら、創子がびっくりしたように問い返してくる。
「一回だけしたことあるよ。事故の後だけどずーっと前このお祭りで。うしろからね、袖とかもってもらって」
「じゃああたしのあげようか? 金魚」
 京香の持つ器にキレイな赤い金魚が三匹と、白と赤のブチ柄の出目金が一匹。
「いいよ。生き物は飼えないから」
「そう? でもその時はどうしたの? すくった金魚、返したの?」
「ううん、手伝ってくれた人が持って帰ってくれたの」
「へー」
「それからは、やってないな。金魚すくい」
 ぎゃーぎゃーいいながら三回目のチャレンジをする創子。全く紙を破らずに、すでにしっかり規定数以上すくって、おじさんに止められて、袋に入れてもらっている京香。
 後ろから覗きこんでいると、不意に肩を叩かれる。
 振りかえると、奈留美さんが居た。
「あれ? お一人なんですか? 先生は?」
 話しかけても反応しそうにない二人に言わすに、中腰から立ちあがる。
「うん、なんかね、あなたに話があるんだって。向うのお社の後ろに居るって言ってたから」
「え? でも、なんで?」
 どうして道彦君に呼ばれてるかも、どうして奈留美さんが呼びに来てるのかも、分からなくて問いなおす。
「さー? 私にも」
 わからないわ、と笑って、じゃあ伝えたからとさくさくどこかに行ってしまう。
 えーっと?
「どうしたの? ゆっこ」
 立ちあがったままの私に怪訝そうに京香が見上げて尋ねてくる。
「ううん。ちょっと、私個人行動していいかな?」
「いいよ。どうせまだソーコここから離れないだろうし」
「ごめんね、すぐもどるから」
 道彦君に会うって言うとまた創子が何か言いそうだから、言わない方がいいだろう。
 道彦君の話ってなんだろうと、ちょっとどきどきしながら、走れないのがもどかしかった。
 それでも自分的に、かなり早めに目的地にたどり着く。少しお祭りの会場から離れただけで、びっくりするほど暗くて人気がない。
「せんせー?」
 そーっと、呼んでみる。
 居ないのかな? 遅れたから帰っちゃったとか?
「先生ー?」
 もう一回呼んで、そろそろ暗いほうを覗く。やっぱり居ない。
 長居するのが躊躇われて、暗がりに背を向ける。場所聞き間違えたのかなぁ
「きゃっ!?」
 突然、目の前に人かげが現れる。しかも、男の人……五、六人。
 じり、と後ずさる。体が、無意識に引いた。
 同じだけ、近づく影。
「あの、どいてもらえませんか?」
 私の問いに、彼らが笑う。言葉はなく、ただじりじりと、迫る影。歩幅の差か、どんどんその差は縮まって行く。
 何かに躓いて、気がついたら地面。バランスが上手く取れなくて、掌がすりむける。
「やっ………」
 立ちあがれない。足が、動かない。
 必死に這って逃げようとした私の髪を、誰かが乱暴に引いた。
「いやぁ!!!」
 体ごと持ちあがるほどひどく引っ張られる。痛くて、やっと悲鳴が出た。
「いやって、こんなとこに一人で居てさー」
「そうそう」
「アレー……どっかで見たことある気がする。この子」
「ナンパでもしたのかよお前」
「ちげーよ。あれー? 思い出せねー」
 浴衣のすそが乱れて足が太腿まであらわになるのが、外気にふれた感触で分かった。
「おめーの脳みそ干からびてんじゃねーのか?」
「夏休みはいる前にガッコやめたやつらに言われたかねーよ」
「るせーよ、おめーも秒読みだろうが」
 てんでかってに、世間話のようにしながら、もうすぐそこまで近づいてくる……
 咄嗟にすそを直そうと出した手が…手首がごつごつした手に捕まれた。
「やめっ!」
 怖い、どうしよう。誰か、助けて……!!
「いや! 助けて!! 誰かっ! ……先生っ!!」
 違う。道彦君はいなかった。ここには、居ないのに……
「ここじゃいくらなんでも近すぎるぜ」
「そーだな、もちっと奥行くか」
「先生! 助けてっ!!遠野先生ッ!!」
 誰か来て。助けて。体が動かないの。逃げなくちゃいけないって分かってるのに…体が…動かないの。足が………!!
「助けて……っ! 道彦君!!」






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